主要メーカーについての雑感

■ゼブラ


 三菱鉛筆と双璧を成す、信頼性の高いボールペンを製造しているメーカー。


 旧油性ボールペンに関しては、ゼブラと三菱鉛筆の信頼度は抜群に高い。耐アルコール性が高く、経年劣化にも強い。

 ゼブラの油性ボールペンに共通している特徴は、インクが出過ぎる傾向があること。書き味はいいのだが、インクが出過ぎて糸を引いたり、ダマが出来やすかったりする。


 ゲルインクについても、サラサシリーズの信頼性は高い。全体にそつのない、スタンダードな性能と言える。

 ゼブラのゲルインクは、油性とは逆に、インクフローに若干の不安要素を抱えているようである。三菱鉛筆やパイロットが滑らかな書き味のゲルインクボールペンを出し、極細に挑戦している中、ゼブラだけは従来の書き味のままで、0.3mmのカリカリ感、使い勝手の悪さも改良されていない。


 低価格帯で高級に見せるボールペンを作るセンスのあるメーカーで、スラリ300やフォルティアシリーズなどは、見た目からでは値段がわからないような高級感のあるペンを作っている。

 また、実用性を重視するメーカーでもある。サラサクリップに代表される丈夫なクリップや、サラサ300にラバーグリップを採用している点など、使ってみると良さが分かるペンを作ってくるところが嬉しい。


 ゼブラのボールペンは、事務にいいから「ジムニー」、さらさら書けるから「サラサ」と、直球的なネーミングのものが多いが、最近は、ぶれないから「ブレン」、濡れても書けるから「ウェットニー」、明かり+書くで「ライトライト」など、コクヨ並にセンスがダサめになりつつあり、個人的に心配である。


 また、サラサブランドにサラサドライやサラサRなど、染料インクを使用したものを混ぜるようになってきたのも懸念材料。同じブランドで使用しているインクが異なるのは紛らわしくて困るからやめて欲しい。



■三菱鉛筆


 ゼブラと双璧を成す信頼性の高いボールペンを製造しているメーカー。

 油性、ゲル共に、クセが少なく扱いやすいペンを作る。楽ボやシグノなどの安定感のあるブランドを作り続けるイメージがある。


 一方で、実用的なものからそうでもないものまで、次々に新技術を開発しまくる変態メーカーでもある。

 低粘度油性のスタンダードを築いたジェットストリームはもちろん、世界最小0.18mmのペン先径を実現したシグノbit、唯一無二の加圧リフィルを用いたパワータンク、画期的な消せるペンだったが使い勝手が悪くて商品自体が消滅したユニボール シグノ イレイサブルなど、とにかくいろいろ新技術を投入した商品を発売してくる。


 また、商品のネーミングが投げやりなことがあるメーカーでもある。画期的な滑らかペン先を搭載したゲルインクボールペンに「シグノRT1」、画期的な顔料速乾ゲルインクを搭載したゲルインクボールペンに「シグノ307」など、商品の素晴らしさが欠片も伝わらない新鮮味ゼロの名前を付ける残念なところがしばしばある。

 その極地は「パワータンク スマートシリーズ 細軸」だろう。わかりやすいっちゃわかりやすいが、1000円のペンにこんな名前を付けるべきではない。もっとも、ペンの見た目も、1000円とは思えないくらいチープだったのだが。


 インクやペン先に関する技術の高さは疑いようもないが、軸のデザインについては酷い。ジェットストリームやパワータンク スタンダードの、あの謎のアウトドア感というか、別に格好良くもないのにごてごてしたデザインはイマイチだし、シグノRT1やユニボールワンに使われているラバーはホコリをくっつけまくる。

 高級モデルの高級感のなさも問題。ジェットストリームエッジを高級モデルと言うべきか微妙だが、あれは三菱鉛筆が考え抜いた挙げ句に考えすぎて失敗した典型例だと思う。あれは、遠目からはなんとなく格好良く見えるし、実用面では使いやすいが、手にして間近で見たときの意外なチープ感とがっかり感はなかなか悲しいものがある。

 この辺は、万年筆を作っていないメーカーの悲しさかもしれない。



■PILOT


 もともとは万年筆や高級ペンを得意とし、安価なボールペンについてはそれほど力を入れていなかったメーカーだが、フリクションペンがめちゃくちゃ大ヒットしたあたりからか、三菱鉛筆やゼブラを相手に本格的に競い合う気になったらしい。

 後発ながら、低粘度油性のアクロボール、水性顔料ゲルのジュース、ジュースアップの完成度は高い。ジェットストリームやシグノ、サラサと充分に戦える性能を誇る。


 万年筆メーカーなだけあって、高級モデルの作り方がうまいが、アクロインキを開発する以前は、見た目は良くても中身は質の低いリフィルを使っているメーカーに過ぎなかった。しかし、ジェットストリームに匹敵するアクロインキを開発してしまったことで、パイロットの高級ペンは高級感と実用性を兼ね備えてしまい、他メーカーにとっても脅威になりつつある。


 かつてのパイロットのペンは、カリカリとした引っかかりのある書き味と、すぐにインクが出なくなる気難しさが良くも悪くも特徴的だったが、ハイテックCのニードルチップから進化したシナジーチップをジュースアップやフリクションポイントノック04に採用し、その欠点を解消しつつある。



■ぺんてる


 油性顔料インクを使用したローリー(現在廃番)、水性顔料ゲルインクにニードルチップを採用したハイブリッドテクニカ(現在廃番)など、変わったペンを多くリリースしているメーカー。現在でも油性ボールペンや水性顔料には力を入れず、ニードルチップの水性染料にばかり注力している。

 日本のメーカーのくせに海外での事業に力を入れており、日本未発売の商品も多い。


 マニアの心をわかっているくせに、わざとマニアが望むようなものをリリースしない意地悪メーカーでもあり、エナージェルになかなか0.4mmをリリースしなかったり、ブルーブラックインクを投入するのを焦らしまくったり、トラディオシリーズを逆輸入でちょろちょろ販売したりと、なかなか客を舐めたことをする。そんなことをしているからコクヨに乗っ取られそうになるのである。


 長年ニードルチップのペンをリリースしているだけあって、現在のエナージェルに使われているニードルチップは、耐久性、インクフロー、書き味などの性能は他の追随を許さない。パイロットがシナジーチップを投入してきたことでやや優位性は失われつつあるが、それでもやはりニードルチップメーカーとして最も優れているのはぺんてるだろう。


 また、速乾インクについても長年販売し続けているだけあって、ゼブラや三菱鉛筆などの後発に対してまだアドバンテージがある。


 デザインセンスについては変わっている。トラディオシリーズやエナージェルフィログラフィのような優れたデザインを投入してくることもあれば、ビクーニャのような異次元のセンスのペンを繰り出してくることもある。ローリーのひょうたん型、三角形のSPRなどの変な形状のグリップも出していた。

 だが、一番わけがわからないのはハイパーGの突起である。格好良くもなく、使いづらい。誰も得しないあの謎の突起はなんだったのか。

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