【PV三万突破企画!】男子校に入学したはずなのに、なぜか超能力バトルな件:前編
またも事件を起こしてくれたのは、シオリさんだった。前回……一万突破企画の時の事件……の仕返しに、シオリさんの研究室にゴキブリ駆除用の煙を大量に流し込み、気絶まで追いやったのは懐かしい記憶だ。
そして、彼女はさらにその仕返しに来たわけだ。再び俺ら全員が油断した隙をついて、例の、みんなに夢を見せる機械につながれたらしい。
だが、今回はお互いに200メートルぐらいはなれた大きなスタジアムのようなところにいる。全員にインカムがつけられているようだ。
「ふっふっふっ。今回は抜かりないよ!君たち全員、わが手中にあり!」
その後の長ったらしい説明を要約すると、俺たちを眠らせた後、助手に運ばせて、あらかじめ地下に監禁したらしい。助手って誰だよ。
「今は超能力バトルがブームと聞いてね。そこで、君たちにはデスゲームをやってもらうことにした。」
超能力で殺しあえってか。
「ふざけんな!誰がそんな、むやみに暴力なんてふるうかよ!」
確かに、発言者のカオリ以外はその言葉を信じられる。
「ていうか、この状況何よ。シオリってそろそろ何者なの!?」
初めてのルナは戸惑っているが、仕方ない。シオリさんが満足するまでは帰してもらえないし。
お互いの声を聴いて、だれがいるのかを確認すると、俺、ユウキ、アオイ、カオリ、レイナ、ユウリ、ユミコ、ヒカル先輩、ルナのようだ。バトルものにすると強すぎるセバスチャンさんと、弱すぎるユイはお休みか。
「まず初めに、能力の説明をしてやろう!
ユウキちゃん!お習字したものを発生させられる能力!」
なるほど、それぞれの個性に合った超能力で戦えってか。戦うつもりはないけど。
「アオイちゃん!相手の能力を跳ね返す能力!我が妹故にえこひいき万歳!」
最強じゃねえか。アオイを倒すにはばれないように攻撃するしかないのか。しないけど。
「カオリちゃん!筋肉増強!」
まさかの超能力以外。しかもドーピングじゃねえか。
「レイナちゃん!刃物を浮かせて、好きに動かせる能力!」
また強そうなのが出てきたな。刃物ないけど。
「ユウリちゃん!相手の攻撃に当たらない能力!」
常日頃からそうだよね。アオイの能力の完全下位互換だけど。
「ユミコちゃん!念動力!」
ここにきて超能力らしいのが出てきた。こいつも普段からだけど。ていうかレイナの上位互換では……?
「ヒカルちゃん!チアダンスしながらあだ名を呼ぶと、その人を操ることが出来る能力!もちろん同時には一人までだよ!」
超限定的なうえに疲れそう。本人は喜んでいるからいいんだろうけど。てか、インカムうるさいですよ。
「ルナちゃん!レーザーを好き放題打てる能力!」
オープンスペースで無敵じゃねぇか。
「もちろん、スタートと同時に迷路を作るから、他のみんなは安心してね!」
安心させたいなら早く出してくれよ。
「そして最後にカヅキちゅわん!」
なぜ俺だけキモイ呼び方をするんだ……。
「迷路のマップと、誰がどこにいるかの把握!」
完全に逃げの一手じゃん。俺の能力弱すぎない?
「能力紹介で尺を取りすぎたけど、そろそろ準備はいいね?迷路、展開!」
何人かが上の方に上っていくのが見える。立体迷路かよ。
同時に俺の頭の中にマップが表示される。人の名前までわかる親切設計だ。
「ちなみに優勝者には好きな人を一日この機械で好きにできる権利を上げます!」
シオリさんがそういうと、インカムからでもみんなの殺気がぐんと伝わってくるようになった。
「それでは、よーいスタート!」
シオリさんが号令をかける。
「ねえカヅキー?私のところにおいでよ。」
「旦那様は、妻といるべき。」
「お姉様ぁ!お守りしますわぁ!」
早速、カオリ、ユミコ、レイナが一番弱くて便利な俺に目を付けたらしい。
「あれ?シュガー大変なの?がんばれがんばれシュガー!」
ザボッ、ザボボボッという音から、ヒカル先輩が躍っているのがわかる。
すると、体の自由が利かなくなってきた。
「あれ?もしかしてこれ、シュガーの体?楽しいねぇ!」
俺の声が聞こえてくる。レイナはいつもこんな感じなのだろうか。怖すぎる。
「ていうことは、もしかして……。」
俺の体がズボンを下ろし始める。待て。いや、待ってくださいヒカル先輩。
「ふにゃっ!?」
パンツの中身を自分の体が勝手にのぞいた時点で、ヒカル先輩の気配が逃げていった。
「なんだろう。この、無駄に穢された気分は……。」
再び頭の中のマップに集中すると、近くには誰もいないが、ユミコとレイナが近づいていた。
『監視カメラ23に視点を切り替えますか?』
どうやら、視点の切り替えまでできるらしい。マップ機能、思ったより有能じゃん。戦えないけど。
俺が視点を切り替えると、ユミコとレイナが対峙していた。
「ここは負けられませんわ。お姉様と一日中お姉様を愛でる会を行いますの。」
俺が見ているとは思っていないのか、ぞっとする発言をしてくれる。
「夫婦としての一日を過ごすの。」
ユミコの方も同じく、である。
「でも、こんなこともあろうかと、日ごろから包丁を持ち歩いていたかいがありましたわ。」
そういうと、ブラックジャックもびっくりするほど大量の包丁を、上着の下に着こんでいるのを見せつける。
「愚行。念動力はこっちのが使い慣れている。」
レイナが包丁を体の周りに広げ、クジャクのようにして攻撃態勢をとると、そのうちのいくつかがレイナ自身に向かう。ユミコが支配しているのだろう。
「愚行はそちらですわぁ!能力が刃物限定な以上、包丁はワタクシの方が優先的に操れますわぁ!」
すぐにその包丁の支配を取り返す。別の包丁をユミコが支配し、その包丁をレイナが取り返したり、撃ち落としたりする。
すでに超能力バトルって感じだな。
いくつもの包丁が宙を舞い、ちょっとした合戦みたいになっている。
「やぁ!」
「せい!」
しかしそれも長くは続かず、片方が支配している包丁が増えてくる。超能力を使い慣れているユミコだ。
さらに視線誘導なども行い、レイナの支配する包丁は瞬く間に減っていった。
「ここで、負けるわけには……行きませんのぉ!」
しかし、当然のことながら気合だけではどうしようもない。だんだんと刃の海がレイナに近づいていき、勝敗が決するその時だった。
「ぐはっ。」
ユミコが倒れる。どうやら、一番ユミコに近い一本でレイナが攻撃したようだ。レイナの方が一枚上手だったな。
「どんな人も勝ちを確信した瞬間は無防備になりますの。」
そういったレイナが踵を返そうとした時だった。
「その言葉、そっくりそのままお返しするぜ。」
どこからともなく表れたユウリが背中からレイナを攻撃した。
「そん……な……。」
「ユミコちゃん、レイナちゃん、アウトー!ちなみに負けた人は私が待機している部屋に仮想的につれて来られて、ペロペロさせていただきまーす!」
これは絶対に負けられない。
慌てて頭の迷路マップを確認すると、ルナが少し近くにいたので場所を移動させてもらうことにした。
マップでみんなの位置を確認しながら移動する……待て。アオイはどこに行った?脳内マップのどこにもいない。まさか……
「動くな。」
真後ろからアオイの声が聞こえる。
「こっちにはレイナたちの戦闘の後から拾った包丁がある。動くんじゃないぞ。」
「何が目的だ。」
「ウチと手を組め。うちら二人がいれば絶対に勝ちまで持って行ける。」
「それを信じろと?」
「手を組むならウチが前を歩こう。それと、ウチが反射できるのは相手の能力だから包丁は渡せないが、カヅキの能力の反射を解こう。」
おそらくは俺の能力の反射で俺からは位置がわからなく、俺の位置が分かったのだろう。
「この状況じゃ、飲むしかないだろ、その条件。」
「それだけお前のマップ能力は貴重だ。おそらくユウリも似たことができるが、マップに写るんだろう?それなら、気が付いていないんだろうな。」
本当にそれだけだろうか。いやな予感は付きまとうが、今こいつと手を結べれば、俺にとっても得だ。せいぜい利用してやろう。
「わかった、まずは能力を解け。」
俺は自分の頭にアオイの位置が表示されるのを確認して、
「同盟成立だな。」
といった。
「それで、今は近くに誰かいたり、戦っている人はいるのか?」
アオイに聞かれたので、マップを確認する。
「近くには誰もいないが、遠いところでカオリとユウキが近づいている。」
『監視カメラ9に視点を切り替えますか?』
「すまんアオイ。しばらくユウキ対カオリを観察する。警護を頼む。」
「オッケー。」
こいつもこの状況下では確実には信用できないが、そうせざるを得ない状況だしな。
ユウキ対カオリは、カオリが圧勝だと思っていたが、そうでもないようだ。
「力、力、力……。」
漫画などの力に取りつかれたキャラのように、おそらく開始からずっと、ユウキが力と書き続けていたのだ。ユウキの能力は習字で書いたものを発生させる能力。ならば、画数が少ない「力」を大量に書けば、カオリを上回るドーピングができるということになる。
二人が出会ったのは、曲がり角でだった。
先に反応したのはカオリ。素の反射神経がいいからな。
一瞬で相手が誰なのかを確認し、素早く距離を取る。相変わらず恐ろしいセンスだ。
「波!」
距離を取ったカオリに、近づかれてはまずいと判断したユウキが衝撃波を起こす。迷路で回避ができないのもあり、カオリはもろにそれを食らった。
「壁!速!」
最初からカオリに在ったらこうすると決めていたのか、迷路に壁をはり、速さを追加して逃げる。
「だらっしゃぁい!」
ドゴォン!
カオリはコンクリートより丈夫そうなその壁を殴り、粉々にすると、増強させた脚力で走り出す。
「壁!壁!棘!」
「効かんなぁ!」
ユウキも逃げながらいろいろなものを出していくが、カオリは力ずくですべて突き破っていく。
「地雷!槍の雨!斧!」
ユウキが出すものはだんだんと過激になっていくが、それでもカオリには効かず、地雷を踏みつぶし、槍を跳ね返し、斧をつかみ取る。
「これならどうよ!炎!」
ユウキが走った後がどんどん燃えていく。さすがのカオリも一瞬立ち止まるが……。
「すぅーっ、ばはぁーっ!」
肺活量まで強化されているのか、一気に炎を吹き飛ばした。
「うそぉ!」
さすがのユウキもパニックになるが、そこはさすが、すぐに落ち着きを取り戻す。
「爆!爆!雷!」
爆弾の雨を降らせた後、それらを一気に爆発させてカオリをふきとば……。
「ぐるぁあ!」
我が幼馴染ながらどうしてああなった。
「洪水!」
「うぐぐぐ……。」
カオリが押し戻される。
「これでどうよ!百鬼夜行!」
すると、様々な妖怪がカオリに襲い掛かる。これで勝敗は決したか……。
「おまえら、ウチに逆らうのか?」
カオリが指をポキポキならして立ち上がる。ピタッと妖怪たちは止まったが、後ろに押されて一匹だけカオリの前に突き飛ばされてしまった。みんな大好き、から笠おばけである。
「ほぉう?」
カオリがその子を掴むと、残虐ショーの幕開けである。
その凄惨さは、思わず監視カメラが自動でモザイクをかけるまでに至った。
「まだやりたい奴はいるか?」
カオリが百鬼夜行たちを睨むと、妖怪たちはカオリ側に寝返った。
「生き物に頼ったのが間違いだったな、ユウキ。」
こうして、苦戦はしたものの、カオリの勝利で戦いは幕を閉じた。
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