『火の島』 中の中

やましん(テンパー)

『火の島』 中の中


 『だれ? アナコンダさん? ごきさん? うさぎさん?』


 そんなもの、いるわけないよな。


 とは思いながら、やはり、アナコンダさんが怖い。


 こういうのは、人類の古くからの記憶らしい。


 よほど、へびさん類とは、食ったり食われたりを繰り返したに違いない。


 しかし、大きな分厚い葉っぱの中から顔を出したのは、くまさんでした。


 やや、大きめなサイズの、くまさんのぬいぐるみそのものであります。


 『やややややや。これは、また、珍妙な。この星に、くまさんがいるとは、聞いてないな。もっとも、ほとんど、聞いてないもんな。可愛いものには、毒がある。しかし、どうみても、くまさんだ。』


 ぼくは、それ、を、両手で掬い上げました。


 『ぎぎらな、まやたばら? なだなかなわ。』


 『さあて、わからないよ。きみ。したから、上がってきたの? この木、2000メートルはあるんだよ。』


 『からからなた、はやわ?』


 『発音自体は、ぼくらとあまり、変わりがない。』


 と、ぼくは、かなたに、小さな移動する点をみつけました。


 それは、宇宙ごきの、監視ソーサーに違いありません。


 滅多に来ないけど、たまには、来ます。


 とっさに、くまさんを、ベッドの下に押し込みました。


 監視ソーサーは、多少、寄り道しながら、こちらに近寄ってきます。


 そうして、真上までやってきました。


 ぼくは、上に向かって、手を振ってやりました。


 幾分かは、皮肉です。


 すると、ソーサーから、なにかが、ぽい、と、落ちてきました。

  

 『わ、爆弾!』


 思わず、体をよけたのですが、それは、意外なほど、柔らかく落下してきたのです。


 『なんだ、これは。』


 それは、卒業証書を入れる、筒みたいなものでした。


 『なんかの、通知かな。食糧になってもらいます。なんて。』


 ふたを開けたら、爆発するかも。


 誰だって、そう思うでしょう?


 ソーサーは、いなくなっていました。


 ベッドのしたから、くまさんが、ごそごそ、這い出してきていました。


 ぼくは、顔から出来るだけ離すようにして、筒の蓋を、引っ張りました。


 『ぱ、か、 』


 蓋は、ぶじ、外れました。


 中には、書状が詰まっています。


 『やれやれ、ぎりぎりに詰めてるよ。こういうのは、ねこママの趣味かな。』


 と、ぐるぐると、引っ張り出すと、紛れもない、お手紙です。


 『こんにちは、おげんきですか。ぼくは、まだ、げんきです。ぽ。みなを、代表して、お手紙にしました。こんど、そちらの、くま族と話がついたので、反乱をおこします。その間に、救出します。ぽ。くわしくは、またあとで。なお、ごき軍団が開発した、登木装置を使って、くまろうくんが、上がります。見つかったら、死刑なので、よろしく。ぽ。あ、あなたも、同罪、ぽ。そちらのレジスタンスが、協力するぽ。翻訳イアホンいれました。じゃ、がんばってね。ぽ。はとさぶろ。』


 『なんと、適当な。』


 くまろうくんが、つぶらなひとみで、見上げておりました。



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『火の島』 中の中 やましん(テンパー) @yamashin-2

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