第4話照れ臭くなる加瀬
翌日。
下駄箱で、靴を脱いでスリッパに履き替えていると、横から元気な挨拶が聞こえた。
「おはよー、加瀬さん。何で顔、しかめるの?ひどいよ~加瀬さーん、ねぇねぇ~教室まで一緒に行こっ!」
「おはよう。いやあぁ、なんて言うか......頭に響く煩さだなぁ、と」
「いつも通りなんだけど。雨降りで頭痛に悩まされるタイプだったっけ、加瀬さんって?」
朝から、黒々とした分厚い雲に覆われ、ぽつりぽつりと雨が降るどんよりとした天候だった。
「違うけど......体調は良くない、今日は」
三ケ野は、ウチの腕を掴んで歩きだし、ペットを散歩させているような感じになる。
「昼休み、何かおごるよ。私」
「いいよ、そんなこと......」
「心配だよ、加瀬さんが。心配だから、元気になってほしいからおごるの」
足を止めて、ウチに向かい合い、そう言い渡す彼女。
「ありがとう、心配してくれて。お言葉に甘えます、今日は」
何だか照れ臭い。彼女にこんなことを言うなんて。
「ふふ~んっ!それでいいっ、加瀬さん」
彼女は、満足したようで満面の笑みを浮かべ、指をウチの指に絡ませ、恋人繋ぎをして、再び歩きだして教室を目指した。
三ケ野の教室の前で彼女と別れ、ウチが教室に入ると、既に登校しているクラスメートの視線が集まる。
俯きながら、席まで歩いて、椅子に腰をおろして、スマホの電源を入れ画面をタップして弄り始める。
これまで以上に教室が居づらくなってしまった。
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