第2話放課後に起きた出来事

放課後。

ウチが通学鞄を肩に提げて椅子から立ち上がり、歩き出そうとした瞬間、扉付近から元気な声で呼ばれる。

「おーい、加瀬さん。途中まで一緒に帰ろ~」

「断ったのに、はぁー」

周りに聞かれないような声量で、呟いてからため息を吐いた。

三ケ野が駆け寄って、いつもの明るい声で体調を確認する。

「加瀬さん、大丈夫?いつもより暗いよ、表情。熱でもあるの?」

彼女は、ウチの額に掌を当てて、体温を確認する。

「な、ないよ。ウチのほかに友達はいくらでもいるでしょ、ウチじゃなくても──」

「照れてる。居るよ、居るけどっ!加瀬さんと友達になりたいの!私は、加瀬さんが好きなんだよっ!」

彼女の叫び声に教室にいたクラスメートや担任の視線が集まった。

「ちょっ......誤解されるようなこと言わないで。今まで以上に皆の視線が痛いんだけど。三ケ野さんてば、黙ってないで何か言っ──」

告白を叫び終えた彼女は、瞼を閉じ俯き、黙って返事を待つ。

彼女の身体が小さく震えている。

他クラスの同級生等が廊下から様子を窺っている。

「......」

返事に困る告白をされて、思考がうまくいかない。

クラスメートや担任、同級生の視線が、ウチに集中する状況を乗り越えられない。


誰か、この状況を打開してくれないかな。

本当にお願いします、助けて~誰かぁ!


「退いてー、ちょっとあけてね。ごめん、通るから~。詩乃ってばぁ考えなよ、加瀬さんのことをさぁ!」


教室の前方の扉からそんな勇ましい声が聞こえ、教室に入ってきたのは、スタイルが良く胸元まで伸びた茶髪と目もとがキリッとしているのが印象に残る女子だった。


三ケ野は、彼女に気付いて向かい合うと、機嫌の悪いような低い声を発した。

「結菜には関係ないじゃん。邪魔しないでよ。しゃしゃりでないでよ、結菜」


「いやいや、そういうわけにはいかないよ。困ってるよ、加瀬さんがさ。公開告白は相手が困るんだから、考えないと。三ケ野がお騒がせしてすみませんでした。三ケ野にはきつく言っておくので許してください、金坂先生」

結菜と呼ばれた彼女は、三ケ野の声に怯むことなく、この場をおさめる。

担任の金坂先生も状況が飲み込めてないような返しをする。

「あっ、ああ......」

三ケ野は、腑に落ちないような表情だった。

教室に賑やかさが戻っていく。

結菜と呼ばれた彼女は、ウチと三ケ野の手をひいて、廊下に連れていく。





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