第八章 江戸時代編
第39話 江戸幕府は徹底管理とコントロールによって成り立っていた!?
ついに来ました江戸時代です。『水戸黄門』や『遠山の金さん』、『暴れん坊将軍』など、有名な時代劇は大抵、江戸時代が舞台なので知っている人も多いんじゃないでしょうか?
『天皇VS貴族VS仏教』から始まった、日本の覇権争いは、いつの間にか『天皇VSサムライ』に変わり、そして『サムライVSサムライ』が争う戦国時代を経て、徳川家康によって終止符がうたれたのです。
江戸時代に栄華を極めた、徳川政権の個性を例えるなら『徹底管理とコントロール』です!
農民や諸国大名を生かさず殺さず、上手く搾取して、経済的に押さえ込むことで、反対勢力が江戸幕府にクーデターを起こせないようにしました。
しかし、江戸幕府の『徹底管理とコントロール』ですが、時代によってキツくなったり、ユルくなったりを繰り返していくのが特徴です。
こんな感じで徳川政権というのは、けっこう浮き沈みが激しくて、『江戸の三大改革』と言って、3回も改革が行われるのですが、逆にいえばそれだけ揺らいでいた、という事です。
なんでこんなにコロコロ変わるのかというと、財政の失敗と災害が重なって、幕府は財政難の陥り、ずっとお金に困ってたからです。
「あれれー? 徳川家の家訓って、家康が“一に質素、二に質素、三、四がなくて五に質素”に決めたよね? どうなったの」と、思った方もいるでしょう。
家康の個性は『我慢&ケチ』で、徳川家の家訓も「質素倹約をしましょう」というものにしましたが、家訓を守っていたのは最初だけで、だんだんとお金を無駄遣いするようになっていきます。
という事で江戸時代のポイントは3つです!
1、徹底管理とコントロール
2、体制がキツくなったり、ユルくなったりする
3、コロコロ変わるのはお金に困ってたから
この3点をおさえておくと、江戸時代がわかりやすくなります!
【秘伝のタレの最終形態!
徹底管理とコントロールの江戸時代のスタートは、とにかくキツく締め上げていきます。
「最初だからバシッといく」って感じでしょうか?
初代家康~三代目家光まで続いた、厳しい政治を『武断政治』といいます。逆に言えば、四代目以降はユルくなるって事ですが、それはまた後ほど……
家康の息子で二代目将軍、徳川秀忠が『武家緒法度』を制定してます。
これは各地の大名やサムライを統制するもので、元々、鎌倉幕府が作った『御成敗式目』の流れをくんでいます。
なぜ、御成敗式目が江戸時代まで受け継がれたのかというと、御成敗式目はとても優秀で、法律を追加するという形で受け継がれていたのです。
まさに、受け継がれる“秘伝のタレ”といったところでしょうか。
さて、江戸幕府も武家緒法度という、味の染み込んだ秘伝のタレによって、サムライや大名を統制したのですが、その内容は「文武両道にはげむ、お酒飲んじゃダメ、身分をわきまえる、節約しなさい」など、ストイックで意識高い内容が書かれていました。
さて、いくつかある項目のなかで、注目するのは「大名は勝手に城を建てたり、住んでるお城を修理したらダメだよ」という部分です。
また、別の法律で「領地にお城は一つまで! それ以上は建てちゃいけないし、もともとあったら壊しなさい」という『一国一城令』も出しています。
このように、江戸幕府は徹底的に大名のお城を管理し、場合によっては奪っていますね。突然、城を奪われたお殿様はかわいそうですね……
では、なんでこのような法律を作ったのでしょうか? それは、お城は軍事拠点にもなるので、それを奪い管理する事で、大名の軍事力を低下させるのが目的です。
こうして軍事力を削ぎ、幕府に対して反乱を起こせないようにしたんですね。
【経費を削ぐのが目的だった!? 参勤交代】
江戸幕府の代表的な政策と言えば『参勤交代』と『鎖国』ではないでしょうか?
これら有名な政策は家康が作ったのではなく、家康の孫で徳川三代目将軍、
なぜ、このような政策を行ったのか、見ていきましょう!
まず『参勤交代』とは、一年おきに各藩の領主を江戸でお仕事させるという制度です。
現代風に言うと、「各地の支店長は交代で年に一回、本社で単身赴任しなきゃいけない」という事ですね。
つまり各地のお殿様は年一回、江戸と自国を行ったり来たりしなきゃいけなかったのです。
お城を奪われたり、定期的に移動しないといけないし、お殿様も大変ですね……
さて、参勤交代を行う目的ですが、「大名の経済力を削って、反乱できないようにする」ことです。
現代では新幹線や、飛行機、高速道路などが発達しているので、日本全国どこでも簡単に行き来できるようになっていますが、江戸時代はそうはいきません。
たとえ、九州だろうが、秋田県だろうが、移動手段は徒歩一択です。長旅になるので、護衛のサムライを連れていかなければいけません。
しかも、自国の家来を連れていかなければならなかったので、必然的に行列になります。
さらに、お金を持っている大名は見栄を張りたいために、自分の行列にアルバイトとして雇ったサクラを忍ばせて、立派に見せていました。
募集項目は「ただ歩くだけの簡単なお仕事です」だったに違いないでしょうw
こんな感じで、お殿様の行列は長くなってパレードのようになり、『大名行列』と言われるようになりました。
移動するだけでも時間とお金がかかるのに、サクラも雇ったので、莫大な費用がかかります。
こうして定期的に行われる参勤交代というパレードによって、お金を消費させ、各藩の経費を削ぎ、武器を買うなどの軍事強化をできないようにしました。
『武家緒法度』×『一国一城令』×『参勤交代』、この3つの合わせ技によって、軍事力と経費を削り、疲弊させる事で、反逆の芽を摘んでいたんですね。
まさに『徹底管理とコントロール』の江戸幕府を、象徴する政治です。
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