第11話 不屈の鑑真と愉快な仲間たち

【日本に行きたい鑑真VS日本に行きせたくない弟子】


 聖武天皇がスピリチュアルにハマって国分寺や大仏をせっせと造っている頃、中国には鑑真がんじんという偉いお坊さんがいました。


 鑑真は「日本に来ようとしたけど渡航に失敗して、目が見えなくなった人」と、歴史の授業でも習ったと思います。

 

 しかし、鑑真もなかなか面白いエピソードがるのでお話します。


 仏教にハマっていた聖武天皇は、唐に鑑真というすごいお坊さんがいるという話を聞いて、こう思いました。


聖武天皇「日本の仏教をもっと発展させたいから、鑑真にコンサルしてもらおう!」


 そして、栄叡ようえい普照ふしょうというお坊さんに、鑑真を日本に連れてくるように命令しました。


 そして唐に渡った栄叡&普照は鑑真を探しだします。


栄叡ようえい「いやー、やっぱり本場の仏教は違いますねー」


普照ふしょう「日本の仏教なんか変なんです。鑑真さん、日本に来て色々教えてくださいよ」


鑑真「そうなの? 必要とされてるなら、日本に行こうかな」


 栄叡&普照に仏教の指導を頼まれた鑑真は、日本に渡航する事にしたのです。


 しかしこれから鑑真、栄叡、普照にとって長く、厳しい旅になるとは、まだ誰も想像していませんでした。


 実は鑑真が日本に行く事を良く思わない人達もいたのです。


弟子A「鑑真さん、日本に行くの?」


弟子B「師匠、もうけっこう歳とってるけど、大丈夫かな?」


弟子C「師匠には唐に残ってほしいよー」


 鑑真は日本に行く気満々でしたが、弟子達は鑑真の事を心配していたのです。


 そんな弟子達の心配をよそに、鑑真は栄叡と普照と共にお寺を出ていき、コソコソと渡航の準備を始めました。

 なんでコソコソしているのかと言うと、当時の唐では一般人が国外へ行く事は禁止されていたのです。


 つまり鑑真は密航によって、日本へ向かおうとしていたのです。

 

 船を用意していた栄叡&普照ですが……


役人「お前らー、何やってんだー!」


 なんと役人にばれてしまったのです。というのも、鑑真の弟子たちが……


弟子「お役人さん、なんか日本へ密航しようとしてる人がいますよ」


役人「なにー! 密航はゆるさん!」

 

このように鑑真を国にとどめたい弟子が密告していたのです。


役人「鑑真さんじゃないですか! もう、密航はダメって法律で決まってるでしょ! 鑑真さんをそそのかしたのは、その日本人だな。逮捕だー!」


 こうして栄叡と普照は捕まってしまい、牢屋にぶちこまれたのです。


【2回目の渡航】


役人「もう、二度と鑑真さんを連れていこうするなよ! 大人しく日本に帰りなさい!」


栄叡&普照「はい、わかりました。僕たち反省してます」


 栄叡&普照は帰国を条件に釈放されました。二人とも落ち込んでいますね……しかし、役人が見えなくなると……


栄叡&普照「鑑真さんのところへいそげー!」


 この二人は懲りていなかったのです。不屈の栄叡&普照ですw


栄叡「鑑真さん、お久しぶりです。いやー、シャバの空気は美味いっすねー」


普照「さっそく、日本に行きましょう」


鑑真「よし来た!」


 栄叡&普照という不屈の二人組に、鑑真もノリノリです。


栄叡「今度は役人にバレなかったですねー!」


普照「よかった、よかった……あれ? なんだか波が荒くなってきたって、うわー、嵐がきたー!」


 なんと運が悪い事に、台風が直撃してしまいました。


栄叡「あ、あぶなーい! これはダメだ! 一回引き返しましょう!」


 こうして、鑑真と愉快な仲間たちは、唐に引き返す事を余儀なくされていまいました。


【3回目の渡航】


栄叡「三度目の正直っていってね、今度こそ上手くいきますよ。鑑真さん」


 せっせと渡航の準備を進める栄叡&普照でしたが……


役人「またお前たちかー!」


 また、役人にバレてしまいました。


というのも、やっぱり鑑真の弟子が……


弟子「お役人さん、また日本へ密航しようとしてる人がいますよ」


役人「ええ! またかよ!」


 このように密告していたのです。


栄叡「普照! 鑑真さんを連れて逃げてー! うわー、捕まった!」


 今回は栄叡が単独で捕まり、牢屋にぶちこまれました。


【4回目の渡航】

 

 普照は渡航の準備を進めますが、栄叡を置いていくわけにはいきません。しかし、再犯で捕まったので簡単に牢屋から出る事はできません。


栄叡「なんとかして脱獄したいなぁ。でも、どうしようかなぁ? 鑑真さんと一緒に日本に行きたいしなぁ」

 

一体、栄叡はどうなるのでしょうか?


栄叡「急に体調が悪く……うっ!」

 

 なんと栄叡は突然、死んでしまいました。鑑真を日本に連れていく悲願を達成できず亡くなったのです。

 

 そして、栄叡の遺体は牢屋から運び出されたのですが……


栄叡「やっぱりシャバの空気は美味いぜ! この栄叡、絶対に鑑真さんを日本に連れていくまで死ねない!」


 なんと栄叡は牢屋の外に出たとたん元気になりました。実は死んだふりで、牢屋から脱獄したのです。


栄叡「鑑真さん、普照、待たせてごめんね」


普照「もう、遅いよ栄叡」


栄叡「なかなか、脱獄が難しくてさ」


鑑真「全員そろったし、早速、日本に向けて出発しますか」


役人「コラー! お前達、密航はダメだって、何回言ったらわかるんだあ!」


 また、役人に捕まってしまいました。今回も弟子が密告していたのは言うまでもありません。


【5回目の渡航】


 4回も渡航に失敗した鑑真と愉快な仲間達でしたが、鑑真はついに役人から目をつけられてしまいますし、栄叡&普照も牢屋にぶちこまれていました。


役人「もう、本当にいいかげんにしろよお前ら!」


栄叡&普照「はい、わかりました。僕たち反省してます」


役人「マジだぞ! もう二度と、鑑真を連れだそうとするなよ! わかったな。絶対だぞ! 絶ッッッッ対に鑑真を連れていこうとするなよ!」


 役人はフラグを立てつつ栄叡&普照を釈放しました。


 しかし、役人が見えなくなると……


栄叡&普照「鑑真さんのところへいそげー!」


 この二人は懲りていなかったのです。このやり取りを何度繰り返しているんでしょうか。


栄叡&普照「鑑真さん、お久しぶりっす! 早速日本に行きましょう!」


鑑真「よし来た!」


 不屈の栄叡&普照なら、鑑真も鑑真です。彼らには“諦める”という文字がないのかもしれません。

 

 役人に目をつけられていた鑑真でしたが、長く時間を空けていたのでマークは外れていました。

 今回は密告される事なく、出向できた鑑真と愉快な仲間達でした。

 

 無事日本に着く事は出来るのでしょうか?


栄叡「今回は上手くいきましたね! 鑑真さん」


普照「日本はもうすぐですからね……って、あれ、なんだか波があらくなってきたような……」


栄叡「って、うわー! また嵐がやって来た! 流されるー!」


 なんと、また台風が直撃してしまったのです。


 鑑真と愉快な仲間達が乗る船はどんどん南に流されてしまい、なんと台湾より南の海南島かいなんとうという島まで漂流してしまったのです。


栄叡「鑑真さん! 大丈夫ですか?」


鑑真「うーん、なんとか生きてる」


普照「一旦、唐の港に戻りましょう」


 もう、いいかげん諦めてもいいと思うんですが、鑑真と愉快な仲間達は不屈の精神力を持ってるので、流されたくらいじゃへこたれません。

 島から大陸に渡り、陸路を通って唐に引き返しました。しかし、唐までものすごい距離があって日本の本州を縦断できるくらい離れていました。


 それでも諦めない鑑真と愉快な仲間達でしたが……


栄叡「く、急に体調が悪くなって……ガクッ」


普照「だ、大丈夫か!? 栄叡!」


栄叡「ど、どうやら、俺はここまでみたいだ……鑑真さん、すいません、これ以上歩けません……普照、後はたのん、だ……」


普照「そんな、栄叡! 一緒に鑑真さんを連れて日本の土を踏むって約束しただろ! だから、立つんだ! 立つんだよ! また得意の死んだふりなんだよな!? 栄叡!」


栄叡「捕まったりしたけど、皆ですごした日々は、たの、しか……た」


鑑真&普照明「栄叡ーーーーーーーーーー!」


 栄叡は道半ばで死亡してしまいました。


 更に不幸は続き、熱帯の病気にやられてしまい、鑑真の目は見えなくなったのです。



【6回目の渡航】


 なんとか唐まで戻ってきた鑑真&普照でした。そして、ここで二人に大きなチャンスが巡ってきます。

 遣唐使の船が到着していたのです。


普照「鑑真さん、この船に乗って日本に行きましょう!」


鑑真「そうしよう!」

 

鑑真&普照「私たちは遣唐使でーす。日本へ帰りまーす」


 こうして二人は遣唐使に紛れ込んで船に乗り、日本へ向けて出向する事ができたのです。

 

 そしてついに……


普照「鑑真さん! 日本が、日本が見えてきましたよ!」


 悲願の鑑真を日本に連れてくる事を達成できたのです。


普照「栄叡……見てるか? 俺、ついにやったよ。鑑真さんを、日本に連れてくる事ができたんだ! やったー!」


 日本にやってきた鑑真は聖武天皇から熱烈な歓迎を受けました。


 そして、鑑真の指導によって、日本のお坊さん達はより厳格さを求めれるようになり、仏教の基盤はしっかりしたものになります。


 鑑真は奈良県の唐招提寺とうしょうだいじというお寺で暮らしました。

 

 そして日本の仏教の発展に全てを捧げ、波瀾万丈な人生を送った鑑真は唐招提寺で息を引き取ったです。

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