第12話 ラブラブ独裁政権!? 朝廷を乗っ取ろうとした道鏡

【大仏が出来てひと安心かと思いきや……】

 

 仏様の力で国を平和する、という目的で造られた奈良の大仏も完成し、鑑真の指導によって日本の仏教は発展していきました。


聖武天皇「これで、疫病も権力闘争も収まるだろう。よかった、よかった」

 

 聖武天皇は満足していますね。そんな仏教大好き聖武天皇が亡くなり、女性の天皇である孝謙天皇こうけんてんのうが即位しました。

 

 しかし“仏の力で国を治める”という聖武天皇の願いとは裏腹に、朝廷内では再び権力闘争が発生するのです。

 

 何度もお話しているように、『天皇、豪族(貴族)、仏教』による覇権争いは、まだまだ続きます。


 ここで、今までの流れをおさらいしましょう。


 飛鳥時代、推古天皇と厩戸王(聖徳太子)の時代は事実上、蘇我氏という豪族が覇権を握っていました。


 中大兄皇子と中臣鎌足によって、蘇我氏は滅ぼされ覇権は天皇に戻ります。これが大化の改新ですね。


 中大兄皇子が天智天皇に即位した後、大友皇子VS大海皇子による皇位継承争いが起き、琵琶湖大戦争もとい壬申の乱が発生しました。

 天皇同士の戦いといえます。

 

 そして壬甲の乱は大海皇子が勝利し天武天皇なりました。

 しかし、天武天皇が亡くなった後は藤原氏の権力が強くなってきて、藤原不比等が政権ます。


 藤原不比等の死後、長屋王が政権をとりますが、不比等の子供達である藤原4兄弟の策略によって失墜していまいましたが、藤原4兄弟は天然痘によって全員死亡します。


 政権の空白を埋めたのは皇族である橘諸兄でした。


 こんな感じで覇権争いが続いたので『天皇なの? 豪族なの? また天皇なの?』という風に権力があっちこっに移動しています。


「あれれー、おかしいぞー? 天皇、豪族、仏教による三つ巴の覇権争いが続くって言っていたのに、仏教がいないなぁ?」と思った方もいるでしょう。


 なぜなら、仏教勢力は今まで発展段階で力をつけていなかったのです。


 しかし、奈良時代になると仏の力で国を治める鎮護国家を目指しました。

 

 奈良の大仏が出来たり、鑑真という仏教界のスターが来日したりと、奈良時代は仏教が盛り上がってきます。

 

 すると仏の力で国が治まるどころか、仏教勢力が力を着けてきたため天皇家の存続を揺るがす大きな事件が起きます。



【藤原の時代は長く続かない!】

 

 藤原広嗣ふじわらひろつぐの乱以降、しばらく大人しくしていた藤原氏でしたが、性懲りもなくまた現れました。

 

 その名も、藤原仲麻呂ふじわらのなかまろという人物で、藤原4兄弟の子供です。

 

 藤原仲麻呂は綾小路きみまろさんに名前が少し似ていますが、決して漫談家ではなく、橘諸兄を退けて政権を握るようになりました。


 日本を引っ張ってきた兄貴分である橘諸兄でしたが……


橘諸兄「これは、俺やられるかもしれん。引退するわ」


 という事で政界から大人しく退きました。


 しかし、橘諸兄の息子である奈良麻呂ならまろは、仲麻呂に政権を奪われた事に怒って……


奈良麻呂「くっそー! 俺が政権を奪い返してやる!」

 

 クーデターを計画しました。“まろまろ対決”が勃発しようとしていたんですね。


仲麻呂「残念だったな奈良麻呂! お前の行動は全て、まるっと、全部、お見通しだぜ!」


奈良麻呂「なに!?」


仲麻呂「政界に麻呂は一人で十分なんだよ。」


 こうしクーデターは事前に発覚し、奈良麻呂は捕まってしまいました。まろまろ対決は不発におわります。


仲麻呂「大炊王おおすいおう、お前天皇やれよ。俺がバックで指揮をとるから」


大炊王「オッケーわかったよ」


 仲麻呂は自分の身内である大炊王を淳仁天皇じゅんにんてんのうに即位させ、自分の権力をしっかりと固めたのです。


仲麻呂「ふははははは! 再び藤原の時代がやってきたぞー!」

 

 自身も出世し、天皇は自分の身内。仲麻呂の権力は不動のものになる……と、思いきや朝廷内にとんでもない怪物が入り込んでいたのです。


 その怪物は淳仁天皇の前に天皇をしていた、孝謙上皇の側にいました。


孝謙天皇「私、あなたの事が大好きー (人´ з`*)♪」


???「おいおい、いちゃつくと、俺たちの関係がばれちゃうだろ」


孝謙上皇「でもー、道鏡どうきょうの事が大好きなんだもん」


 なんと女帝である孝謙上皇は、道鏡というお坊さんとイチャイチャしています。


 皇族と一介のお坊さんが“いい感じ”になるなんて、すごいスキャンダルですね。週刊誌が飛び付きそうなネタです。


 さて、道鏡はどのような人物なのか見ていきましょう。


 一介のお坊さんと言っても、道鏡はものすごく優秀でした。そして朝廷にも認められ、宮殿内のお堂に入る事になります。

 

 そこで道鏡と孝謙上皇は出会う事になります。天皇とお坊さんという、相容れない2人ですが関係は深まっていく事になりました。



【ラブラブ独裁政治の始まり!?】

仲麻呂&淳仁天皇「上皇、道鏡と仲良くするのは、マズイですよ」

 

 仲麻呂と淳仁天皇のコンビは、孝謙上皇に注意しましたが……


孝謙上皇「うるさいわねー! あんた達なんてもう嫌い!」


 なんと孝謙上皇の怒りを買ってしまったのです。

 

 それだけに止まらず……


孝謙上皇「政治は仲麻呂じゃなくて、道教に任せるから!」


仲麻呂「上皇! そりゃないですよ~」


孝謙上皇「あんた上皇に逆らうの?」


仲麻呂「ぐぬぬぬぬ……」


 権力を固めたと思っていた仲麻呂でしたが、道鏡の登場によって窮地に立たされてしまいます。


仲麻呂「こうなったら、道鏡を倒すしかない!」

 仲麻呂は“打倒道鏡”を掲げ、『藤原仲麻呂の乱』というクーデターを決意します。


孝謙上皇「仲麻呂ちゃん、頑張ってるね。でも、あなたの動きはお見通しよぉ。うふふ」


 なんと仲麻呂のクーデターは、孝謙上皇に読まれていたのです。そして……


道鏡&孝謙上皇「ラブラブアタック!」


 仲麻呂は孝謙上皇&道鏡の反撃にあいます。


仲麻呂「ひいいいいいい! お、お助けー!」

 

 返り討ちにされた仲麻呂は都から平城京から逃げ出しますが、追っ手に捕まり死亡してしまいます。こうして藤原仲麻呂の乱は、あっさりと終わってしまいました。


孝謙上皇「淳仁天皇ちゃん。あなたも仲麻呂の身内だったわよねぇ。どうなるかわかってるのかしらぁ?」


淳仁天皇「ひ、ひいいいいいい!」


 淳仁天皇は孝謙上皇から皇位を奪われた上に、“島流しの刑”にされ、孝謙上皇は再び天皇に返り咲いたのです。

 皇位を取り戻した孝謙上皇は、称徳天皇しょうとくてんのうになります。


 そして、道鏡&称徳天皇によるラブラブ独裁政治が始まるのです。



【神託に振り回されっぱなしの朝廷。宇佐八幡宮神託事件】


 大分県にある宇佐八幡宮うさはちまんぐうという神社をご存知ですか? この神社は全国に約44000社もある八幡神社の総本宮になります。


 ちなみにコンビニで一番多いセブンイレブンが、2021年の時点で約21000店舗なので、八幡神社の数の多さがわかってくれると思います。

 

 近所の神社が八幡神社という方も多いのではないでしょうか?


 なぜここで宇佐八幡宮のお話が出てきたのかと言うと、この神社を中心に道鏡が『宇佐八幡神託事件』という、後世まで語り継がれるとんでもない事件を起こすからです。


 それでは、道鏡が起こした事件を見ていきましょう!


 藤原仲麻呂の乱を切っ掛けに、権力を握っていた仲麻呂と、その相方である淳仁天皇が失脚し、元々一介のお坊さんだった道鏡が権力を握る事になりました。


 さらに道鏡は称徳天皇から『法王』の称号をもらい、権威は絶対のものになりました。


 そして、道鏡は……


道教「俺、天皇になれるんじゃね?」


 このように考えるようになったのです。


道鏡「ちょっと、浄人きよひと。ちょっと耳貸して」


浄人「なになに?」


 この浄人というのは、道教の弟です。


道鏡「法王になったけど、次は天皇もいけると思うんだよね。けど、決定的なものがないから……ゴニョゴニョゴニョ」


浄人「フムフム……くっくっく、お兄ちゃんも、悪い男だねぇ」


道鏡「フッ、仏教の新しい未来を開きたいだけさ。それに俺が天皇になる事は、お前にとっても良いことじゃないか!」


 道鏡は何やら悪さを考えているようですね。


 そしてしばらくすると、浄人は称徳天皇の所に現れました。そして……


浄人「称徳天皇。私、すごい宇佐八幡宮の神様から、すっごい神託をもらったんですよ」


称徳天皇「なになに? 教えてぇ!」


浄人「道鏡を天皇にすれば、世の中が平和になるって八幡神に言われたんですよ」


称徳天皇「本当に! じゃあ、私の次の天皇は道鏡に決まりね!」


 大好きな道鏡を天皇にしないさいと、神様に言われたので称徳天皇は大喜びです。


 しかし、神託に疑問を持つ者もいました。その人物は和気清麻呂という人物です。それにしても、麻呂という人物が多いですね。


清麻呂「浄人の神託って本当かな? ちょっと、宇佐八幡宮に行って調べて来よう!」


 こうして、清麻呂は宇佐八幡宮に行きました。そして……


清麻呂「道鏡を天皇にしちゃダメ! 天皇になれるのは皇族って決まってるでしょ! って神様から言われました!」


 このように、別の神託を持ってきたのです。



【ラブラブ独裁政権の終焉】


称徳天皇「何言ってるの! 道鏡が天皇になるんじゃないの! そんな神託ありえない!」


清麻呂「私の神託が本当です! 道鏡と浄人は嘘を吐いてまーす! はい、ダウト!」


 こうして浄人の神託と、清麻呂の神託が衝突して、道鏡を天皇にするか、しないかで朝廷内は揉めに揉めます。 


 称徳天皇は大好きな道鏡を天皇にしたいので……


称徳天皇「清麻呂、めっちゃムカつく!」


 このように激怒していました。


 一方道鏡は……


道鏡「清麻呂め、余計な事をしてくれたな……生かしちゃおけん!」


 なんと道鏡は清麻呂暗殺計画を実行したのです。仏の教えは何処へいったのでしょうか? しかし、清麻呂暗殺計画は失敗します。

 

 更に道鏡に不運が訪れました。


称徳天皇「次の天皇は道鏡なの……よ、ってあれ、急に体調が……わるく……ガク」


 称徳天皇が突然亡くなってしまったのです。道鏡にとって後ろ盾を失う事を意味していました。


 道鏡は称徳天皇の死によって、権威が一気に弱くなります。結局、道鏡の権力は称徳天皇がいなければ維持できない、貧弱なものだったんですね。


道鏡「俺は法王だぞ!」


「ふーん (´<_` )」


道鏡「偉いんだぞ!」


「へえ ( ´_>`)」


道鏡「言う事を聞け!」


「ヤダ(^o^) お前もう、地方に左遷ね! バイバーイ」


道鏡「ええ、マジで ガーン(´Д`|||) 」


 こうして道鏡は都から遠く離れた下野国(現在の栃木県)のお寺に飛ばされてました。一時期は絶大な権力を持った道鏡でしたが、左遷された後は、一般庶民と変わらない生活をしていたようです。


道鏡「はぁ、世は儚い……」


 ドンマイ道鏡。

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