第三章 奈良時代編

第10話 奈良時代は争いだらけ? 

【奈良時代はドロドロした時代!?】

 奈良時代といえば、あの『奈良の大仏』が作られたり、『東大寺』が建てられてた時代ですね。


 さて、東大寺といえば鹿だらけの奈良公園もあるので、さぞかしほのぼのとした時代だと思ったら……全然そんな事はなく、めっちゃドロドロしています。


 さて、以前私は「天皇、仏教、豪族(貴族)による三つ巴の覇権争いが続く」とお話しましたが、それが激化していく時代でもあるんですね。


 特に仏教が力をつけていき、天皇の地位を脅かすようなお坊さんまで出てきます。


 それでは、奈良時代の日本を見ていきましょう!



【藤原VS皇族の覇権争い】

 日本史の授業でも藤原ふじわらの姓を持つ人物はやたらと聞きますが、それだけ日本の歴史に影響を与えた一族と言えます。

 

 また『デスノート』の作者、小畑健さんの漫画『ヒカルの碁』にも平安貴族の藤原佐為ふじわらのさいというキャラが登場するので、藤原氏という名前を知っている方も多いのではないでしょか?


 さて藤原氏の初代というのは、中大兄皇子と共に大化の改新を行った中臣鎌足なかとみのかまたりです。


中大兄皇子「鎌足くん。君は大化の改新で頑張ったから、『藤原』の姓をあげちゃう!」


鎌足「ありがとうございます!」


 こうして中臣鎌足は藤原鎌足になりました。ピカチ○ウがライチ○ウに進化するような、ものですねw


 小畑健さんの漫画に登場する藤原佐為はフィクションですが、彼のご先祖様は中臣鎌足という事になるのです。


 中大兄皇子の支持を得た藤原鎌足は、長く政権に関わり、その子供である藤原不比等ふじわらのふひとも朝廷に大きな影響を与えていました。

 

 どれくらい影響力があったのかと言うと……


不比等「元明天皇、都を平城京に移しましょうよ」


元明天皇「不比等がそう言うなら、移そうかしら」


 これは現代からすると、首都を東京から千葉県へ移動させるようなものです。

 このように藤原京から平城京に都を移せるほど、藤原氏というのは絶大な影響力があったのです。

 

 奈良時代を作った人物といえますね。

 

 もし現代に不比等がいたら、Twitterのフォロワーが100万人を超えているに違いありませんw


 都が平城京に移ってから10年後、事実上覇権を握っていた藤原不比等が亡くなりました。

 

 すると、天武天皇の孫である長屋王という人物が政権を握るようになります。


 ちなみに以前お話した三世一身の法(土地の無料キャンペーン)は、長屋王が制定したのです。


 このまま覇権は皇族に移るのかと思いきや、それに待ったをかけたのは不比等の子供達である武智麿呂むちまろ房前ふささき宇合うまかい麿呂まろでした。


 ややこしくなるので、これから藤原4兄弟と呼びますw


 藤原4兄弟は「親父の頃のような藤原家の栄華を取り戻したい!」と考えていました。

 そこで自分達の妹である藤原光明子ふじわらこうみょうしを、聖武天皇に嫁がせようとしたのです。


 聖武天皇といえば、奈良の大仏造りの中心人物になる天皇ですね。


 実は聖武天皇も藤原に血が流れて、光明子が嫁いでしまったら、天皇は完全に藤原の血に支配されてしまいます。


 しかし、長屋王が「ちょっと待った!!!」と言って現れました


 ここまでくると、もはや皇族と藤原氏の「待った!!!」「異議あり!!!」の掛け合いです。逆○裁判もビックリですねw


長屋王「天皇に嫁げるのは、皇族の血が流れている人じゃなきゃダメでしょ! 藤原4兄弟はなにルール違反しようとしてるの!? 光明子を嫁にしたいかん!」


 このように言ったのですね。


藤原4兄弟「長屋王の奴。余計な事をしてくれたな!」


 おや? 藤原4兄弟が怒っていますね。これは、波乱の予感です。


???「聖武天皇。ちょっとお話、よろしいですか?」

 

 聖武天皇の所に怪しい人物が現れましたね。何者でしょうか?


密告者「長屋王が聖武天皇の事を呪っていますよ。これはクーデターに違いありません」

 

 どうやら密告者が現れたようです。


聖武天皇「長屋王が? でも、彼はそんな事をするような人間じゃない……」


藤原4兄弟「聖武天皇! これは国の一大事ですよ」


 藤原4兄弟が示し合わせたように、しゃしゃり出て来ましたね。


藤原4兄弟「長屋王め! 天皇を呪いやがって、許さん! 聖武天皇、私達が懲らしめてきます!」


聖武天皇「ちょ、ちょっと待ってよ!」


 聖武天皇は藤原4兄弟を止める事ができないようです。頼りない天皇ですね……。



 藤原4兄弟は長屋王を取り囲み、事実を問いただしました。


藤原4兄弟「お前、天皇を呪っただろ!」


長屋王「俺がそんな事するはずがない!」


藤原4兄弟「いいや、証言者もいるんだ!」


長屋王「だから、俺は天皇を呪ってなんか……」


藤原4兄弟「嘘だッッ!!!」 


 こうして追い詰められた長屋王は「もう、おれダメだ……」と言って、自害してしまいます。



 さて、本当に長屋王は聖武天皇を呪っていたのでしょうか?


藤原4兄弟「長屋王を追い詰める策略も上手くいったぜ! これで邪魔者もいなくなったな! フハハハハハハハ!」


 やっぱり“天皇を呪っていた”というのは、藤原4兄弟の嘘だったようです。藤原4兄弟は悪いやつですねー。


 こうして藤原4兄弟の思惑通り光明子は聖武天皇に嫁入りしました。


藤原4兄弟「これで天皇家は藤原の血で固めた!」


 さて、悪いことをしていた藤原4兄弟でしたが、当時は天然痘てんねんとうという病気が猛威を振るっていました。

 

 天皇家は操れても、ウイルスからは逃れならなかったのです。覇権を握った藤原4兄弟でしたが……


藤原4兄弟「これからは俺達の時代だ……あれ、なんだか体調が悪くなって……きた……ガクッ」


 なんと藤原4兄弟は全員、天然痘であっさり死んでしまいます。疫病の流行は藤原4兄弟にとどまらず多くの人が感染しました。

 

 もしかしたら、長屋王の呪いだったのかもしれませんね……と怖い事を言ってみましたが、天然痘が流行った原因は遣唐使だと言われています。

 遣唐使は大陸の文化や知恵を日本に輸入しましたが、同時に天然痘ウイルスまで運んできてしまったのです。



【迷走する天皇】

 政権をとっていた長屋王と藤原4兄弟がなくなってしまいました。聖武天皇は頼りないし、これからの政治はどうなるのでしょうか?


???「これからの日本は、俺が引っ張っていくぜ!」

 

 誰か現れましたね。誰でしょうか?


橘諸兄「俺の名前は橘諸兄たちばなのもろえ! 皆俺についてこい!」

 

 すごく頼りがいがある人物が現れました。橘諸兄は皇族の血を引く男です。

 名前に“兄”という字が入っているので、まさに兄貴と呼べる人物ですね。


橘諸兄「お前ら遣唐使に行ってきたからデキるな! じゃあ、出世して!」


「いいんですか!? 俺、藤原家の出身じゃなから、出世できないと思っていたんですよ! 兄貴、一生ついていきます!」


 こんな感じで、橘諸兄の兄貴のやり方は“実力主義”でした。こうして、家柄の良さではなく、優秀な人物がどんどんと出世していきます。


 橘諸兄のおかげでいい感じになってきた朝廷ですが、不穏な空気は九州の方から漂ってきました。


???「ぐぬぬ! 橘諸兄め!」


 なんだかメッチャ、兄貴を恨んでいる男がいますね。


藤原広嗣ふじわらひろつぐ「くっそー! 覇権は藤原家のものだったのにー! 橘諸兄めムカつく!」


 この広嗣という男は藤原4兄弟の子供でした。家柄の良さで官僚になるも、ヤンキーのように素行が悪いので九州に飛ばされた、残念な奴です。

 九州で大人しく博多ラーメンでも食べていればよかったのに、藤原以外の人物が政権を握っている事に不満を覚えていました。

 そして藤原広嗣の乱という反乱を起こしますが、あっさり鎮圧されてしまいました。


 広嗣残念!

 

 こうして橘諸兄の反乱分子はなくなりました。兄貴やったね!



【奈良の大仏、建設スタート!】

聖武天皇「はあ、なんでなんだろう……病気が流行るし、争いは絶えないし、どうしたらいいんだろうか……」

 

 今度は聖武天皇の様子がおかしくなってきました。

 天然痘の流行、度重なる権力闘争で、大変なのはわかりますが、国のトップなのでしっかりしてくれないと困ります。


聖武天皇「そうだ! 仏様の力で国を治めよう! そうすれば、全てよくなるはずだ!」

 

 聖武天皇はスピリチュアルな方向に傾いてしまいました。不幸な事が起こったら、壺や幸運を呼ぶ黄色い財布を買うタイプに違いありませんw

 

 聖武天皇は仏教を普及させる為、国分寺こくぶんじ国分尼寺こくぶんにじを全国のいたる所に建て始めました。


 国分寺と国分尼寺の違いは、国分寺は男性のみの寺で、国分尼寺は女性のみの寺です。なので、キャバクラとホストクラブみたいなものですw


 更に聖武天皇のスピリチュアル倒錯は止まらずに……


聖武天皇「大きい大仏を造れば、仏様の力で国が平和になるに違いない!」


 こうして、奈良の大仏の製作が始まったのです。



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