第9話 日本神話の統一!? 古事記と日本書紀が完成!

【古事記、日本書紀の登場】

 戦に勝利し。皇位を取り戻した大海皇子もとい天武天皇てんむてんのうの権威は、凄まじいものになりました。


 天智天皇が目指した天皇を国の中心とする中央集権化は、天武天皇の手によって一気に進みました。

 

 さて、天武天皇ですが実に色んな事業を行います。


 その中でも、後世にまで伝えられるほどの影響を与えたのは、やはり日本初の歴史書である『古事記』と『日本書紀』の編纂です。


 さて時代はまだ飛鳥時代。


 天武天皇の代まで伝えられていた日本の神話、歴史、また天皇家の家系図というのは、メチャクチャだったので、こんな風になっていました。


「僕のご先祖様のオダノブ・ナ・ガァーが天皇家を作ったんだよ。すごいでしょー」


「家の守り神である、カガワウドンヤシカナイ神がアマテラスのお母さんなんだよ」


「朝廷を裏から牛耳ってたのは、実はポニュポニュ星人だったんだよねぇ! 信じるか信じないかは、貴方次第!」


 こんな感じで内容がバラバラだったり、デタラメな事が多い状態だったのです。


 一方、中国では漢書、後漢書、三国志など、ちゃんとした歴史書を残していたので、天武天皇はそれを見習おうと思ったのです。


 そこで天武天皇は、後世にちゃんとした歴史と神話を伝えるために、日本の歴史書を作る事にしました。


天武天皇「頭が良い事で定評のある稗田阿礼君ひえだのあれい、ちょっと来てくれる?」


阿礼「はいはい、なんですかー?」


天武天皇「こうこう、こういう訳で日本の歴史書を作りたいからさ。神話、歴史、天皇家の系図を覚えてきてくれる」


阿礼「わかりましたー! 任せておいてください」


 古事記と日本書紀を編纂するため、大任をまかされた稗田阿礼ですがメモをとるような事はせず、その方法はなんと“よく聞いて暗記する事”だったのです。


阿礼「ちょっとおじいさん、お話聞いてもいいですか?」


おじいさん「昔、昔の事じゃったぁー…………」


阿礼「フムフム、なるほどありがとうございます」


阿礼「ちょっとおばあさん、お話聞いてもいいですか?」


おばあさん「昔、昔の事じゃったぁー…………」


阿礼「フムフムって、さっきと同じ話やないかーい!」


 こうして阿礼は神話や歴史を覚えていくのですが、途中で指揮をとっていた天武天皇が亡くなってしまったので、古事記の編纂はストップしてしまいます。

 

 しかし、そこへ天武天皇の息子、舎人親王とねりしんのうが現れます。


舎人親王「父の意思は僕が継ぐぜ!」


 こうして舎人親王とねりしんのうによって、日本書紀の編纂は続けられました。

 

 しかし古事記の編纂は止まったままでした。その間、様々な事がありました。


 まず天武天皇の跡を継いだ持統天皇が、唐の都である長楽ちょうらくをモデルにした藤原京を作りそこに都を移しましたが、17年で藤原京は廃都となります。

 

 女の子が生まれてJKになる頃に都が潰れているので、藤原京の時代はとても短いですね。


 そして710年、元明天皇げんめいてんのうによって、再び都の移動が行われます。 


 そう『なんと(710)立派な平城京』で有名な、あの平城京という都に朝廷が移り、時代区分は飛鳥時代から奈良時代になりました。

 

 古事記の編纂が止まっている間に、時代はいつの間にか変わっていたんです。

 

 ピチピチだった阿礼も、だんだん歳をとってきシニアになってきました。


元明天皇「ふと思ったんだけど、神話や歴史、天皇家の系図を覚えてるのって、稗田阿礼しかいないわ。もうおじいちゃんだし、そろそろ古事記を作らないとヤバくないかしら?」


 ちなみに元明天皇は女性の天皇です。こうして、古事記の製作が再開されました。


 古事記の作り方はいたってシンプル! 太安万呂おおやすまろという人物に、阿礼の語りを書き写させるというものでした。


阿礼「昔、昔の事じゃったー」


太安万呂「フムフム」


阿礼「おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に……」


太安万呂「それ、違いますよね」


阿礼「というのは冗談で、イザナギとイザナミが……」


 こんな感じで古事記の執筆は進み、編纂が再開されてわずか3ヶ月後に完成します。


 そして、日本書紀は古事記が出来てから8年後に完成します。


 ちなみに日本書紀は編纂に約40年という歳月を書けて製作されました。女の子がJKどころか、アラフォーになるくらい時間をかけたんですねw



【古事記と日本書紀って何が違うの?】

 古事記と日本書紀は、どちらも八百万の神々が活躍する神話の世界から、天皇が人々を統治する現世の事を書いた日本最古の歴史書です。


 その内容はほとんど同じですが、ターゲットにした読者や、編纂目的が異なるので、所々お話の展開、構成やボリュームに違いがあります。


 なので古事記と日本書紀は、『吉○屋』と『す○家』くらいの違いがあると思っていいですw

 

 それでは、両書の違いを見ていきましょう。


1、ターゲットにした読者

・古事記

 ターゲットにした読者は日本国民です。なので日本人にも読みやすいように『和化文体』が使われています。簡単に言うと“日本語で書いてある”ようなものです。


・日本書紀

 近隣諸国に日本という国をアピールするという役割があったので、ターゲットにした読者は外国人です。なので『漢文』が使われています。外国語で書かれていると思ってください。


2、形式と巻数

・古事記

 ロマンチックな物語調でお話が進んでいきます。つまり歴史小説みたいなものですね。

全3巻で単発で終わっています。


・日本書記

 出来事を年代順に書かれています。つまり歴史の教科書みたいなものですね。

 全30巻という長さを誇ります。また、この後にも『続日本紀』『日本後紀』『続日本後紀』と続編が書かれています。



【古事記と日本書紀を作った目的は?】

 まずはザックリとした日本神話を紹介します。

  

 全てが混ざりあった混沌とした世界に、アメノミナカヌシという神様が現れて、地上と天が別れます。

 そしてその後、イザナギとイザナミという男女のペアの神様が生まれました。

 

 アメノミナカヌシは「イザナギ君、イザナミちゃん、地上を整えてきて、おねがーい」と仕事を丸投げしました。


 地上に降りてきたイザナギとイザナミは、まず日本列島を生みます。

 神話的には私たち日本人が住んでいる日本の土地は、イザナミの子供という事になりますね。


 その後イザナミは火の神様を生むのですが、火傷して死んでしまいました。

 

 独りになったイザナギは、単身でアマテラス、ツキヨミ、スサノオという神様を生みます。

 

 アマテラスは昼の世界を支配し、ツキヨミは夜の世界を支配し、スサノオは海の世界をまかされましたが、いつも泣きわめいていました。

 そしてアマテラスとスサノオがケンカした結果、スサノオは地上に追放される事になりました。


 スサノオが地上に降りると、ヤマタノオロチという怪物が悪さをしていたので倒します。

 そして地上で暮らすようになったスサノオの子孫が、最初の地上の支配者であるオオクニヌシになりました。


 オオクニヌシは出雲(現在の島根県)で地上を支配していました。

 

 それを天から見ていたアマテラスは「地上を統治するのは、天の神の方が相応しいでしょ!」と思いました。

 そしてアマテラスはオオクニヌシに、地上を明け渡すように要求します。

 

 色々あってオオクニヌシは、アマテラスに地上を返上したのです。


 アマテラスは新たな支配者として、自分の孫であるニニギを地上に送ります。


 そして九州の日向(現在の宮崎県)に降り立ち、そこで国を統治していました。

 

 ニニギの4代後の子孫、カムヤマトイワレビコが「国の中心の方が統治しやすいんじゃない」と考え、宮崎から東の方へ移動する事にしました。


 そして紀元前660年、大和(奈良県)にてカムヤマトイワレビコが大和朝廷を作り、初代神武天皇に即位しました。

 その後、天皇家の血は現在まで受け継がれていく、というのがザックリとした日本神話になります。


 私は神話を否定するつもりはありませんし、むしろ日本神話と八百万の神々が大好きです。

 

 しかし、あえて言わせていただきます。『イザナギとイザナミが天から降りてきて、日本列島を生み、さらに子孫が天皇になった!』なんて事は、現実的にはあり得ません。

 

 ですが古事記、日本書紀は『天皇は神様の子孫なんだよねぇ』という事を主張しています。

 これが何を意味しているのかと言うと、「天皇は神様の子孫だから、日本を支配しても文句ないだろ!」という主張を正当化する、隠れた目的あったのです。 


 神話の部分は朝廷の創作ではなく、古来からの伝承が書かれていると言われています。

 そこへ大和朝廷の歴史へ繋がるように、古事記と日本書紀は皇室によって改竄かいざんされていると言われています。











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