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あんなにウキウキしていた気持ちが音もなくしぼんでいく。
もう雨なんかあがってしまえと本気で思うのに、どんどん本降りになっていくし。
弱気になってしまい親友のなっちゃんの姿を探したけれど、彼女はどこにもいない。クラス委員だから先生に呼ばれちゃったかな。
はぁ。
ひとつ溜め息をついてまた、翔ちゃんをちらりと見る。
帰り支度をしながら男の子たちと騒いでる。奥寺さんはそれをしあわせそうにみつめていた。
そっか。一緒に帰りたいなら傘を持ってればいいんだ。
奥寺さんより先に約束をとりつければ……そしたら翔ちゃんと、一緒に帰れるよね?
翔ちゃんの言いつけを守らないといけない気がして、昇降口で生真面目になっちゃんを待った。それから数分も経たないうちに彼女に会えたけど、なっちゃんの顔を見たらなぜだか泣きたくなってきた。
「なっちゃん途中まで入れて?」
精一杯明るく声をかけたつもりが、さっきのショックのせいでだいぶ低音ボイスになってしまった。
「もちろんいいよ、
「うそ……頼まれたの?」
「そうだけど」
なんと、先手を打たれていたなんて。
「いやいや、普通そこまでする?」
ちょっとうんざりしてしまった。
子供扱いしすぎじゃない?
「心配性のオカン系はやっぱ健在だったんだ。幻や気のせいなんかじゃなかった……」
嬉しいような悲しいような。
複雑な気分。
「宮辺がオカン系なんて、そんなこと言うのあんただけだと思うけど?」
「どうせ子供扱いってことでしょ?」
「さぁね、本人に聞けば?」
靴を履き替えて昇降口を出ると、なっちゃんは呆れたように笑って傘を開いた。
翔ちゃんは私の相手をするのがやっぱり面倒になって、明らかになっちゃんに押し付けようとしている。
「迷惑かけるようなこと、もうしないのに」
「美緒みたいな幼なじみを持つと宮辺も大変なわけだ」
「それどういう意味?」
大人っぽい苦笑を浮かべるなっちゃんが、ちょっとだけ憎たらしく思えた。
ひとつの傘のしたで、なっちゃんと肩を寄せあう。淡いブルーの傘の縁を跳ねた雨粒が伝ってく。
大事なことを聞きたいのに、雨音がうるさくて、邪魔されているみたいな気になる。
「なっちゃんは同じクラスだからさ、ふたりのこと、私よりよく見てるでしょ」
「ふたりって?」
「翔ちゃんと……奥寺さん」
なっちゃんはあぁ、と呟いて薄曇りの空をちらっと見た。
「翔ちゃんと奥寺さんて……付き合ってるのかな?ものすごくお似合いだよね」
学校中の誰もが認め、異論を唱える人もいないはず。だってふたりは校内イチの美男美女で、モデルみたいなスタイル。
勉強も運動もできて、放つオーラのキラキラ度がやばい。
こぼれたため息が雨音にかき消され、ローファーの先が水溜まりに沈んだ。
「気になるんなら宮辺に直接ききなよ」
「無理だから聞いてるんじゃん、なっちゃんてほんと冷たい〜!」
言い合いながら土砂降りのなかを並んで歩いていたら、後ろから
「なつー待って!」
「係の仕事片付いたんだ?早っ!」
彼はなっちゃんの彼氏で、生徒会長補佐をしている男の子。
どうやらその用事が思ったより早く片付いたから急いで来たらしい。
はぁはぁ息を弾ませてる。
きっと大好きななっちゃんに追い付きたい一心でここまで来たんだ。
傘も持ってないのに。
こんなに濡れてまで。
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