至近距離恋愛~幼なじみこじらせ中~
友大ナビ
雨の日のすれ違い1
窓の外をよく見たくて思わず椅子からお尻が浮いた。それは終礼間近のホームルーム中のことだった。
「
「えっと、なんでも……ないです」
先生に名前を呼ばれて、自分がほぼ立ち上がっていることに気がついた。慌てて着席したものの、みんなにクスクス笑われた。
は……恥ずかしい。
でも、そんなことよりも、羞恥心を覆すほどのこの喜びを隠すのに困った。だって、雨が降り出してんだもん!
ぽつりぽつりと降りだした粒は、やがてまっすぐな線になって、外の景色をあっという間に濡らしていった。
実はこの日をずっと待ちわびてたんだ。
雨の日だけは
外の景色に気づいて、彼もちゃんとそのことを思い出してくれてるといいんだけど。
そわそわした気持ちのままホームルーム終わりを待って、猛ダッシュでA組へ向かった。
「翔ちゃん、雨! 雨が降ってる!」
廊下側の窓から思いきって声をかけた。
「知ってるし、声でけーよ」
よく知っているキレイな顔がこっちを見た。でも彼はなんだか浮かない顔、冷たい声。
なんでここまでテンションが真逆なんだろ。まぁいつものことだけど。
「ねぇ、今日一緒に帰れるよね?」
無愛想でも無関心でもなんでもいい。
翔ちゃんと帰れるならそれだけでいい。
「俺、傘持ってない」
「で?」
「
「え……」
いやいや、傘はどうでもいい!
翔ちゃんと一緒に帰るっていうのが重要なの!
実は中学のときあんなに私を避けていた彼が、最近になってまた小学生の時のお母さんキャラに戻る……というミラクルが起きてしまっていたのだった。
雨の日だけは一緒に帰ってやってもいい。って言ったのに、なんだよこの面倒くさそうな塩対応は。
でもたった今、彼のこの態度を見てなんとなくわかってしまった。私といるの、やっぱダルいって思っているのかもしれない。
あの頃は一緒にびしょびしょになってくれたけど、私たちもう高2だもん。
「
悔しいことに彼はいつも図星をついてくる。私が天気予報なんか気にする子じゃないってちゃんと知っている。
「……なんでなっちゃんなの?」
「帰る方角同じだし、あいつならきっと持ってるだろうし」
確かにしっかり者のなっちゃんなら学校か鞄に傘を常備していそう。
「じゃあ翔ちゃんはどうするの?」
「俺? どうにでもする」
「一緒には帰らないってこと?」
「まぁそうなるか」
唇を噛んで、言いたい言葉をぐっと我慢した。
「……わかった」
喜びが大きかったせいで、がっかり度が半端ない。
結局ほんとの気持ちは言えなかった。だって雨の日に傘がないと、翔ちゃんが変にピリピリすることに気づいていたから。
これ以上しつこいと、中学時代みたいにまた距離を置かれるかもしれない。
もうそれは嫌。
うんざりしてる顔は見たくない。
それ以外にも一緒にいたくない理由があるのかな。他の誰かと帰る約束してたりして。まさか、噂になってるあの子と一緒じゃ……。
ちらりと
もしかして、ずっとこっち見てました?
そう思ってもおかしくないくらい、しっかりと目があってしまった。
しかも、私を見て微笑んだ。
いつも思うけど、彼女が私に向ける笑顔ってちょっと高圧的なんだよね。
美人だからなおさらすごみがあるというか。
こっちはおどおどしてるのに、なんだろう、あの余裕のある感じ。
胸の辺りがざわざわしてる。
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