第367話 シャーロットの訴え
シャーロットの魂を込めた叫びが、立ち去ろうとしていたクラウディアさんの足を止める。
「あなたと親しい人がどのような人であろうと関係ありませんわ! クラウディアはクラウディアでしょう!」
「シャーロット様……」
目に見えて動揺――というか、心が揺らいでいるクラウディアさん。
それほど彼女にとってもシャーロットという存在は大切であり、この場から立ち去ることを心から望んでいるわけではないというのが伝わった。
ただ、彼女の真面目な性格を考慮すれば、このまますんなりとブラファー家に戻ってくるとは思えない。
――ただ、ここにはシャーロット以外でそれを可能にできる唯一の人物がいる。
「おまえの気持ちはよく分かったよ、クラウディア」
その唯一の人物であるローレンスさんだが……声色からどこかあきらめているような気配を感じる。まさか、このまま「おまえの好きなようにしろ」と言ってクラウディアさんを見送る気なのか?
ブラファー家の関係者ではない俺たちは完全に蚊帳の外状態であったが、クラウディアさんとも同じツリーハウスで時を過ごした者として円満に解決してほしいと願っていた。
双方の願いが叶えられる展開。
この状況でカギを握っているのは――間違いなくローレンスさんだ。
「ブラファー家の未来を考えて自ら身を引くというその潔さはまさに使用人の鑑。賞賛に値する――が、肝心の仕えている主人の意向を無視するというのはいただけないな」
「ロ、ローレンス様……」
「さっきシャーロットが言った通りだ。クラウディアはクラウディア……それだけで十分だ」
「し、しかし」
「悪評などいくらでも覆せる。だが、おまえにいなくなられてはそれこそブラファー家にとっては大きな損失となるのだ。俺やシャーロットがこの場に来ている時点でおまえも察しているのではないか?」
「っ!?」
どうやら、ローレンスさんは核心をついたみたいだな。
クラウディアさんはその場に崩れ落ち――泣いた。
こんなことを言ったら失礼なんだけど、彼女が涙を流している姿ってこれまでの付き合いだとあまり想像できなかったからちょっと驚いた。
そりゃ人間なんだから泣くことくらいあるのだろうけど、クラウディアさんの場合はプロフェッショナルに徹しているというか、そういう弱い部分を人前で見せない感じだったからな。
ともかく、これで揺らいでいた彼女の心は大きくこちら側へ傾いただろう。
問題は……ミレーヌさんの対応だ。
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