第365話 ふたりの関係

「姉さん? おまえに妹がいたのか?」

「……血のつながった実の姉妹というわけではありません」


 クラウディアさん、なんだか困ったような顔をしているな。どうやらそこにだけは触れてほしくなかったって感じだが……シャーロットやローレンスさんからすれば触れないわけにはいかないだろう。


 兄妹の熱い視線に観念したのか、クラウディアさんは妹発言に関して詳細な説明を始めた。


「この子の名前はミレーヌと言って、かつて私と生活をともにしていた時期があり、姉妹同然の関係となりました」

「生活をともに? 両親が亡くなってからブラファー家に引き取られたんだろう?」

「すぐに引き取られていたわけではありません。突然ひとりぼっちになってしまったショックから住んでいた町を飛び出し、それからブラファー家に発見されるまで一年ほどは放浪生活をしていました。その時に出会ったのがミレーヌです」

「ク、クラウディアにそんな過去が……」


 衝撃の事実に愕然とするシャーロット。


 俺たちもそうだが、メイドとして働いている姿しか知らないのでそんな壮絶な過去があったなんてと驚き、固まったしまった。


 ――ただひとり、ローレンスさんだけは冷静だった。


「おまえとその女の関係性については理解できたが――が、それとおまえがブラファー家を出ていった理由はつながらないだろ?」


 そうだ。

 クラウディアさんが放浪生活をしていたという事実は間違いなくブラファー家の当主である

ゼノン様も把握しているはずだし、きっとその流れでミレーヌさんのことも知っていたんじゃないか?


 いずれにせよ、彼女が原因でブラファー家を出たとは思えない――が、どうも事情はそう簡単なものじゃないらしい。


「あんたたちに話をしたところで理解してもられないっていうのは分かっているから……これ以上かかわらないで」

「そういうわけにはいかないとさっき説明を――」

「私は【漆黒の矢】の元メンバーなの」

「っ!?」


【漆黒の矢】――ミレーヌさんがそう口にした途端、ローレンスさんの顔が急に青ざめる。

 さっきまでの冷静さは消え失せ、ひどく動揺しているようだ。


「バカな! 【漆黒の矢】はとっくに壊滅したはずだ!」

「残党がいたのよ。まあ、最近は先代の理念を忘れて、ただの暴力集団に成り下がってしまったから抜け出してきたけど」

「そんな……」

「お、お兄様、わたくしたちにも分かるように説明してくださいまし」


 シャーロットの意見は俺たちの総意でもある。

【漆黒の矢】って、一体どんな組織なんだ?

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