第364話 容赦なし
「なんだ? 俺を知っているのか?」
騎士団の名前を出した途端に現れた表情の変化。
それをローレンスさんは見逃さなかった。
「まさかとは思うが……騎士団に見つかると都合の悪いことでもやっているのか?」
「っ!? ふ、ふざけるな!」
急に声を荒げた女性――だが、その行為は余計に疑いを深めてしまう。素人目から見ても動揺しているのが丸分かりだしなぁ。
当然、普段からそういった連中を相手にしているローレンスさんにすぐさま追及される。
「どうした? 随分と焦っているじゃないか」
「あ、焦って、焦ってなんかない!」
「言葉がうまく出てこないようだな。隠しておかなくてはいけない事情が背後にあるから迂闊に喋れない人間がする典型的な仕草だ」
「なんだと!」
感情を剥き出しにする女性と冷静に詰め寄るローレンスさん。
両者の距離はだんだんと縮まっていくが、ここでクラウディアさんが間に割って入った。
「ローレンス様……これ以上は……」
「どけ、クラウディア。ヤツがやましいことをしていてそれを庇おうというなら……おまえも罪に問われるぞ」
「お、お兄様!?」
ローレンスさんの言葉にシャーロットは驚きの反応を示す。
それは俺たちも同じだ。
さっきまでの態度から、穏便に済ませてクラウディアさんを連れ帰りたいって感じだったのに……ただ、そこはやはり国の安全を託されている騎士団の人間。疑わしい者を放置してはおけないし、規則には厳しい。
たとえ相手がクラウディアさんであっても、そこに余計な線引きはしないだろう。
ローレンス・ブラファーとはそういう騎士だ。
「どうする? 俺の騎士としての力はよく分かっているはずだが……それでもそいつを守るために抵抗するか?」
容赦なく詰め寄っていくローレンスさんに、さすがのクラウディアさんも困惑している様子だ。
……でも、俺には彼の行為がただ脅しているだけには見えなかった。
たぶんだけど、ローレンスさんはクラウディアさんの真意を確かめたいと思っているんじゃないかな。
あの女性が騎士団にバレたらまずいことをやっているのは間違いなさそうだが、クラウディアさんがそれに加担しているのか最終確認をしている――俺にはそんな風に映った。
重苦しい空気が流れる中、ついに女性が口を開いた。
「もういいよ……姉さん」
あきらめとも取れる言葉が――って、ちょっと待て。
今もしかして「姉さん」って言った?
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