第363話 拒絶

「私は……ブラファー家に戻りません」


 クラウディアさんの口から発せられたのは明確な拒絶の言葉。

 まさかの返答に、シャーロットもローレンスさんも固まって動けなくなってしまう。


 一方、俺たちもひどくショックを受けていたが、ここで一歩前に出たのはキアラだった。


「待ってください! 戻らないってどういうことなんですか!」


 誰もが疑問に思っていたが、あまりの衝撃で発せられなかった疑問をキアラは真っ直ぐにぶつけた。


「キアラ様……申し訳ありません。理由は言えません」

「そ、そんな! そんなのって……」


 ここでもクラウディアさんは俺たちから距離を取るような発言をする――が、俺は見逃さなかった。


 彼女は何かを言うたびに、動揺しているのか目が泳いでいる。

 いつもクールなクラウディアさんらしくない、ハッキリと分かる同様の仕草――当然、シャーロットやローレンスさんもそこに気がついている。だから、あきらめきれないと食らいついているのだ。


 しかし、それを鬱陶しがる人もこの場にはいる。


「ああ、もう! しつこいな! あんたたちのもとへは帰らずに私と行動をともにするって言っているんだからさっさと帰りなさいよ!」


 クラウディアさんと一緒にいた女性だ。

 その様子から、なんだか慌てているように映る。

 あと、よく見ると……彼女は剣を持っていた。


 護身用なのか、それともどこかの国の騎士なのか。

 ……いや、騎士という線は薄そうだ。


 彼女の身なりから察するに、本業は冒険者ってところか?

 しかし、それだとクラウディアさんとの関係性がよく分からない。


 偶然出会って仲間になったのか?

 でもなんかそういう雰囲気じゃないんだよなぁ。


 そんなことを考えていたら、突然シャーロットが走りだしてクラウディアさんへと抱き着いた。

 意表を突く行動に、クラウディアさんも驚きを隠せない様子。


「お、お嬢様?」

「行かないで……クラウディア……」


 少ないが、心の底から発せられた願いだった。

 そこへさらにローレンスさんが加わる。


「クラウディア……俺もシャーロットと同じ気持ちだ。それでもまだ真意を隠すというのであれば、クレンツ王国騎士団の名にかけて必ずおまえの真意を見極める」


 騎士団は関係ないんじゃないかなぁと冷静に分析していたのだが、


「クレンツ王国騎士団……?」


 意外にもクラウディアさんと一緒にいた女性が騎士団という単語に反応を示す。

 というか……そもそもこの人誰なんだ?

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