第361話 進化する樹神の剣
再び手がかりが消失したクラウディアさんの行方。
――だが、ここまでの事態はすでに織り込み済み。
もしかしたらたどり着けないかもしれないという展開を想定し、次の手は打ってある。
それこそ俺がここへ来た真の目的と言えた。
ドリーセンの町からではさすがに距離があるため難しかったが、ここまで来ればきっと大丈夫――のはず。
「頼むぞ……」
俺は樹神の剣を取り出すと、いつもの調子で剣先を地面へと突き刺した。
「な、何をしているんだ?」
「これが彼のやり方なんだ」
訝しがるギーエンさんに対し、樹神の剣の力を知っているローレンスさんはそう答えた。
なんだかんだ言って、ちゃんと分かってくれているし、信頼してくれているのだなというのは伝わってくる。
ローレンスさんにとって、クラウディアさんは俺たちが思っている以上に大切な存在のようだから、なんとかして行方をハッキリとさせたいところだ。
地面へと入り込んだ樹神の剣の先端から無数の根が地中を広がっていき、周辺の様子を探っていく。
超広範囲による索敵。
これもまた樹神の剣に秘められた力のひとつだ。
……それにしても、なんだか前よりパワーアップしてないか?
俺としてはありがたい限りなのだが、ちょっと不安になるくらいの調子のよさだ。
しばらくすると、根のひとつがある存在を捉える。
「――どうやら見つかったようです。ここから西を目指して進んでいるようですね。それほど距離はありませんから、シモーネの飛行速度ですぐに追いつけるはずです」
「ほ、本当か!」
「さすがはベイルさんですわ!」
ローレンスさんとシャーロットの兄妹から歓喜の声が漏れる。マルティナたちも、ようやくクラウディアさんの行方がハッキリして安堵しているようだ。
――しかし、ちょっと気になる点もある。
樹神の剣が捉えた気配は……複数だ。
敵対行動を取っているわけじゃなさそうだけど、一体誰と一緒にいるんだ?
その件についてもみんなに報告してみたのだが、キアラが不用意に呟いた「もしかしてあの人も駆け落ちをしようとして」という発言が原因でローレンスさんが取り乱しため、出発が少し遅れてしまった。
ただ、可能性としてはそれがもっとも有力ではあるんじゃないかなぁ。
ともかく、彼女のもとへ向かうとしよう。
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