第359話 たどり着いた村で

 シャーロットさんを追って、彼女の両親がかつて暮らしていたという村へとやってきた俺たち。

 そこはとても牧歌的な雰囲気のする村で、前に訪れたエーヴァ村にどことなく似ていた。


 辺りを見て回っているうちに、周囲の視線が俺たちに注がれていることに気づく。

 まあ、これだけのメンツで急に押しかけてきたのだから無理もないか。


「やけに注目されちゃっているわね」

「な、何か怒らせるようなことをしてしまったのでしょうか……」

「その心配はないと思うよ。――ほら、向こうから接触してきた」


 不安そうにしているマルティナへフォローを入れたと同時に、恰幅の良いひとりの老紳士がやってくる。


「私はこの村の長を務めるギーエンという者だが、君たちは旅の冒険者――には見えないが、一体何をしにこの村へ?」

「それについては俺が話そう」



 最年長……いや、竜人族であるシモーネの方が年上なのだろうが――まあ、そんな細かいことはどうでもいい。とにかく外見年齢的に一番年上に見えるローレンスさんが代表して事情を説明しようとする。


 ――だが、ここで思わぬ問題が。


「人相の悪い男だな」

「あ?」

「ま、まあまあ!」


 いきなり飛び出したギーエン村長の暴言に食ってかかろうとするローレンスさんを必死になだめる。


 ただ、その顔はもはや悪人そのもの。

 ギーエン村長が思わずあんなことを口走ってしまったのもよく分かる。ローレンスさんには申し訳ないけど。


 とりあえず説明役を交代し、この村にクラウディアという若い女性が尋ねてこなかったかと質問をした途端、ギーエン村長の顔つきが変わる。


「なぜ君たちがクラウディアのことを……」

「彼女を知っているんですか、ギーエンさん!」

「知っているも何も、私は彼女の叔父にあたるんだ」

「「「「「ええええええええっ!?!?」」」」」


 ここでまた予想もしなかった事実が発覚。

 ローレンスさんに至っては顔面蒼白になっている。


 ……そんなにショックだったのか?


「俺はあの子の母親の兄なんだ。いろいろとあって妹とは長らく疎遠だったんだが、なぜか結婚したいとこの村に――って、そうじゃなくて、どうして君たちがクラウディアを知っているんだ!?」

「わたくしの専属メイドですもの。知っているのは当然ですわ」


 一歩前に出て高らかに宣言するシャーロット。

 

 ――だが、村人たちの様子がどこかおかしい。

 もしかして……余計な火種を生みだしてしまったか?





















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る