第331話 竜人族の里で大宴会!
竜人族の里で行われた宴会は大盛り上がりとなった。
マルティナは竜人族の料理に興味津々であり、また彼らも人間たちの料理に関心があったのでお互いに作り合うこととなった。キアラやシャーロットは里の子どもたちに初級魔法を披露し、ハノンとアイリアとシモーネの三人はここに至るまでの武勇伝(?)を酒の肴として提供していた。
「こんなに楽しい宴会は久しぶりだよ」
みんなの盛り上がりぶりを眺めていたら、ハンデスさんがやってきた。
「バーディン様は人食いの衝動に悩まれていたからな。それが解消されて本当に嬉しいのだろう。あそこまでテンションの高い姿は初めて見るよ」
確かに、バーディンさんは酒を浴びるように飲んでいて、今は里の者たちと一緒に歌を大熱唱。誰がどう見ても浮かれている状態だ。
「君たちには本当に感謝しかないよ」
「そんな……俺たちは仲間のシモーネを捜して旅をしていただけです」
事の発端はそれなんだよな。
もし彼女が仲間を助けようとしなければ、俺たちは竜人族の里へ来ることはなかったし、前竜王のバーディンさんは人食いの衝動に呑み込まれて他種族に危害を加えていた可能性もあった。
そうなれば、竜人族という種の滅亡へつながっていたかもしれない。
「世界中には我々のように人食いの衝動に悩む竜人族が多くいる。そこで、私は明日からしばらく知り合いの竜人族が住む集落を訪れ、例の野菜について教えようと思う」
「いいじゃないですか。きっとたくさんの竜人族が救われますよ」
「そうなったら、君は我々竜人族にとって英雄になるな」
「え、英雄……?」
突拍子もないハンデスさんの言葉に、一瞬思考が固まった。ただの農家である俺には不釣り合いすぎる肩書きだ。
すると、そこへ新たにシモーネがやってきた。
「どうかしたんですか、ベイルさん」
「い、いや、なんでもないよ。それより、俺たちは明日の朝にこの里を発つ予定でいるんだけど……」
「分かりました! なら、準備をしておきますね!」
シモーネはあっさりと返事をする。
どうやら一緒にダンジョンへ帰るつもりらしい。
「……ここへ残らなくてもいいのか?」
思わず尋ねてしまった。
最初はキョトンとしていたシモーネだが、すぐにニコッと柔らかな笑みを見せる。
「私にとってはあのツリーハウスが家ですから」
「シモーネ……」
俺はホッと安堵する。
やっぱり、ダンジョン農場にはシモーネがいなくちゃね。
安心したらお腹が減ってきたので、マルティナの料理を食べに行こうとシモーネを誘って駆けだすのだった。
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