第327話 新しい農場
人食いの衝動を抑えるために必要な野菜づくり。
その土台は整った。
ここからは――俺の出番だ。
里の長であるゴダンさんとハンデスさんのふたりに農場として利用できる広い土地を紹介してもらい、そこで聖水の効果を得た野菜を育てるプランを改めて竜人族の人々に提案する。
「あの野菜をここで栽培できるというならこれ以上ないほど嬉しいことだが……実際、可能なのか?」
「任せてください」
胸を叩き、高々と宣言すると、みんなに協力をしてもらって周辺に聖水をばらまき、地面に染み込ませていった。
それが終わると、いよいよ剣を抜く。
今回は最初から全力で挑もうと考えているため、魔力を高めて樹神の剣を呼び起こす。
「相変わらず凄いな、こいつは」
基本的は竜樹の剣の状態でも以前よりパワーアップしているのであまり頼る機会はないのだが、今回は竜人族の里が舞台ということもあって気合を入れようと樹神の剣にクラスチェンジさせたのだ。
「おぉ!?」
「な、なんという魔力だ……」
「本当に農業特化用の剣なのか!?」
竜人族たちは驚きの反応を見せつつ、樹神の剣に釘付けとなる。
最近はこういうリアクションも珍しくなってきたよなぁ……ドリーセンの町の人たちはすっかり慣れちゃったし、他で力を使おうとしても、竜樹の剣の効果は知れ渡っているからここまで驚かれなくなった。ちょっと新鮮に感じるよ。
とにかく期待を寄せられているというのは伝わったので、ここからは結果でこの剣の力を証明していきたい。
俺はいつものように樹神の剣を地面へと突き刺す。
この行動は予想外だったらしく、ハンデスさんは「な、何をっ!?」と思わず大きな声をだしてしまう。他の竜人族たちもざわつき始めているが、俺たちからすればこれはもう見慣れた光景。
地面に埋もれている剣の先から魔力を注ぎ、周辺を野菜が育ちやすい土壌へと改良していった。それからいくつかの野菜の種を剣に仕込んでいき、再び魔力を注ぐ。
すると、次から次へと芽が顔をだし、急成長を遂げていった。
「な、なんというスピードだ!?」
「これが農業特化の力……」
「恐れ入ったな。こんな剣があるとは」
竜人族たちの反応が驚きから感心へと変わっていった。
半信半疑だった人もいたみたいだけど、こうしてあっという間に育った野菜たちを目の当たりにして信用してくれたようだ。
これで聖水の効果を持った野菜の大量確保が可能になった。
あとは……旧竜王にも効果がでるのかどうかだけだ。
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