第326話 竜人族を救う策
竜人族の里で農業をやる上での課題。
畑自体を作ることは、パワーアップした竜樹の剣の力で十分だろう。
問題は人食いの衝動を抑えるために必要な聖水の確保。
俺たちが暮らすダンジョンの地底湖には、湖底に魔鉱石が転がっている影響で魔力をまとった聖水が大量に湧いている。この聖水に衝動を抑える効果があると証明されたわけだが、それを確保する手段がなかったのだ。
――しかし、俺はある事実を思い出す。
それは湖で定期的に水浴びをしているシモーネの存在だった。
「シモーネが泳いだあとは湖の魔力が高まっている……これは彼女が竜人族だからこそ起こり得る現象だと俺は考えているんだ」
「まあ、良い出汁がでるのは間違いないじゃろうな」
「ハ、ハノンさん……」
出汁という表現が恥ずかしかったのか、シモーネは真っ赤になってしまった。
……ただ、俺もハノンと同意見だ。
出汁という表現が適切なのか定かじゃないけど、ドラゴンが浸かっていた水には魔力を高める効果が期待できる。そして、この近くには竜人族たちが愛用している滝と川が存在していた。
それを説明すると、メンバーはすぐに俺の狙いを察する。
「なるほどね。つまりその滝から流れでている川の水には聖水と同じ効果があるかもしれない、と」
アイリアの言葉に、俺はゆっくりと頷いて答える。
「あくまでも仮説だからその通りになるとは断言できないけど、調べてみる価値はあると思うんだ」
「うむ! すぐにでも調べに行こう!」
力強くそう宣言したハンデスさん。
それだけ、竜人族にとって人食いの衝動は悩みの種となっており、誰もが解決したいという種族全体の問題であると分かる。
――というわけで、早速俺たちは道中にあった滝へと移動。キアラとシャーロットのふたりがかりで滝の水を魔法で分析してもらうことに。ハンデスさんやヴィネッサ、そしてエセルダが見守る中、開始から十分ほど経過した頃――シャーロットが口を開いた。
「わたくしたちの住むダンジョンの地底湖と同質であるかは不明ですが、この川の水にも間違いなく魔力は含まれていますわ」
「「「「「おお!」」」」」
俺たちは思わず歓声をあげる。
とりあえず、最低限の条件はクリアできた。
――ただ、気になるのは地底湖と同じ質の魔力ではないという点。
魔力っていうのは繊細で、まったく同質ってものは少ないと聞くが……これでちゃんと衝動を抑えられる野菜が育つのかどうか。
こればっかりは実際に試してみないことにはなんとも言えないな。
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