第274話 スラフィンへの報告
霧の魔女の襲撃を退けた俺たちは、学園からの応援と合流を果たす。
これで、とりあえず最悪の状況は回避できたと言っていいだろう。
さすがに霧の魔女が絡んでいるとなると応援の戦力もかなり大掛かりなものとなっていた。特に学園は、管理する農場の一件もあってかなり警戒心が強くなっているからな。この判断は必然と言えるだろう。
――で、森から学園へ戻ろうと準備が整った時にはもう夜が明けていた。
無月草は厳重に保管され、多くの武装した学園職員が警護しながら運ばれていく。
一方、俺たちは無事に帰れるという安堵感からか、全員が強烈な眠気に襲われていた。
学園に到着するまではなんとか起きていようと思ったのだが……残念ながら、それは叶わなかった。
結局、俺たちはすぐに爆睡を始めたのだった。
◇◇◇
学園に到着すると、まずはスラフィンさんにこれまでの経緯を報告。
本来はこの場にゴンザレスさんもいるべきなのだが……事情が事情だけに、彼はもうしばらく静養することとなった。
とはいえ、霧の魔女が仕掛けていた禁忌魔法はすでにキアラとシャーロットによって解かれている。スラフィンさんも、ふたりの手際の良さに感心しきりだった。
「まあ、私たちも日々成長しているってことよ!」
「当然ですわね!」
学園でも屈指の実力者であるスラフィンさんに褒められて有頂天のふたり。特にキアラは嬉しそうだった。この場合、学園での実力者としてではなく、母親に褒められたからという気持ちの方が強そうだ。
その後、スラフィンさんから無月草を持ち帰ったことへの礼を告げられ、さらに報酬が出るという。
あと、無月草は竜樹の剣にしっかり記憶しておいたので、今後は難しい条件をクリアしなくても入手が可能となる。
「今回の件は学園だけでなく、騎士団や魔法兵団のみんなもきっと感謝するはずだよ」
「えっ? どうしてですか?」
「この無月草は非常に万能な魔草でね。さまざまな回復薬にもなってくれるんだ」
なるほど。
それなら今後も何かと重宝されるはず。
――ただ、スラフィンさんの関心は無月草だけではなかったようだ。
「しかし、よくあの霧の魔女を追っ払えたね」
「えっ?」
「過去の事例から分かる通り、彼女の執念深さは並大抵じゃない……君の竜樹の剣に関心を持ったのなら、どんな手を使っても奪おうとしたはずだ」
「では、なぜそれをしなかったのかという謎が――」
「いや、しなかったのではなく……できなかったというのが正しいだろうね」
そう言って、スラフィンさんは小さく笑った。
よく意味が分からなかったので、俺は素直に聞き返してみることに。
「そ、それはつまり……どういう意味なんですか?」
「簡単な話さ。霧の魔女は君たちの実力に恐れをなしたという意味だよ」
俺たちは思わず互いに顔を見合わせる。
まあ……霧の魔女の実力は未知数な部分が多いからな。
どこまで本気なのかがまったく分からない。
確かに、今回は追い返せたが……それ自体がヤツの気まぐれだった可能性もある。
いずれにせよ、これからも警戒を怠らずにいかないと。
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