第272話 全員集合
世界に混乱を招く者――霧の魔女。
【ファンタジー・ファーム・ストーリー】においても、そのトリッキーな言動でユーザーを翻弄してきたヤツをこのまま野放しにはしておけない。
まずはこの結界魔法を突破してキアラたちと合流しなくては。
俺は魔力を込めた樹神の剣を地面へと突き刺す。
直後、巨大な木の根が地中を走り回り、やがて地上に姿を見せると魔力によって生みだされた霧を突き破るようにしてさらに伸びていく。
「っ!?」
向こうもこういう使い方をしてくるのは予想外だったらしく、さすがに驚いた表情を見せていた。おかげで対応が遅れ、俺たちを隔離していた霧は完全に消え去る――と、こちらの存在に気づいたキアラたちが駆け寄ってきた。
「ベイル! 何があったの!」
「気をつけろ! 霧の魔女がいるぞ!」
そう叫ぶと、キアラたちの足が止まり、すぐさま戦闘態勢へ移行する。たぶん、彼女たちも原因は分からないにしろ、何か異常事態が起きているというのはこれまでの経験から察知できたらしく、準備が早い。
さらに、上空から事態を察知したドラゴン形態のシモーネもやってきた。
これでこちらは全員集合――最高の戦力が揃ったわけだ。
それにしても……基本的にのほほんとした農場生活を送っているわけだが、意外と戦闘経験もあったりするので対応力が高い。嬉しい誤算と言えばそうなんだけど、本当は戦わないのがベストなんだよなぁ。
「あらあら~、みんなヤル気満々ね」
一方、霧の魔女は未だに余裕の態度を崩さない。
底知れぬ魔女の実力……これだけの数を相手にして、まだ余力を残していたというのだろうか。
――しかし、
「さすがに私ひとりではこれだけの数を相手にするのは難しそうですね~」
初めて弱気な発言が出る。
やはり、いくら霧の魔女といえど、俺たち全員を相手にするのは不利と判断したらしい。
安堵したのも束の間、
「でも……その剣だけはいずれ必ず手に入れてみせますね~」
霧の魔女は樹神の剣が大層気に入ったらしく、あの様子だとこの先も何かと付け狙われそうだ。俺たちの住むダンジョン周辺の結界魔法をより強固なものとしていかなければならないだろうな。
結局、最後にそう言い残して霧の魔女は姿を消した。
厄介な相手であることには変わりないけど、日に日にパワーアップしていく頼もしい仲間たちもいてくれるので、深く悩まなくてもよさそうだ。
「大丈夫ですか、ベイル殿!?」
「お怪我はありませんの!?」
霧の魔女が去ると、まずマルティナとシャーロットが大声で気遣ってくれる。それからキアラ、ハノン、シモーネ、アイリアも駆けつけてくれた。俺としてはむしろみんなの方に怪我とかなくてよかったと安堵する場面なのだが……まあ、ここまで心配してくれるのは素直にありがたい。
ともかく、あとは周りの回復を待ちつつ、未だに行方不明となっているゴンザレスさんを捜さないと。
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新作をはじめました!
ドラゴンノベルスのコンテスト参加作品です!
ハーレム要素薄めのお仕事もの(?)
基本のんびりな感じ+学園要素ありです!
「魔剣学園寮の管理人は【育成スキル】持ち ~仲間たちからの裏切りにあって追いだされた俺は、再就職先で未来の英雄たちからめちゃくちゃ頼られる~」
https://kakuyomu.jp/works/16816700428346114024
是非、読んでみてください!
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