第268話 森の異変
樹神の剣によって生みだされた神種ソルレイ。
突如現れた鹿型のモンスターは、この新たな力によって倒すことができた。
「これは頼りになるな」
さすがに水竜シモーネほどではないにしても、いざという時は代わりに戦ってくれる傭兵のような存在と思えば使い勝手もいいだろう。
シモーネのことを思い出していたら、ちょうど本人が登場。
「何かあったんですか、ベイルさん」
「いや、みんなを襲ったモンスターを討伐していただけだよ」
「お、襲ったって――あっ!?」
ここでようやくシモーネは周りでぐったりとしている学園調査団の面々に気づいたようだ。
「だ、大丈夫なんですか……?」
「死者はいないみたいだし、今はあっちでシャーロットとマルティナが治療に当たってくれているよ」
「そ、そうなんですね。――あ、あれ? キアラさんたちは?」
「俺もそちら側のチームを探しているんだけど……てっきりシモーネと一緒に思っていたんだが」
「い、いえ、私はさっきまでずっと空から森の様子を見ていましたから……」
だよなぁ。
キアラ、ハノン、アイリアの三人は未だに無月草を探して森をさまよっているのだろうか。
「こうして無月草は手に入れられたのだから、早いところ合流しておきたいのだけれど」
「そういえば、ゴンザレスさんもいませんね」
「えっ?」
言われてみれば……ゴンザレスさんの姿がどこにもないな。
「モンスターに襲われた時にどこかへ避難したのかもしれない」
「そ、それなら、私が空から他の人たちを探してみます」
「すまない。頼むよ」
「お任せください!」
ニコッと微笑んでから、シモーネは再びドラゴン形態に変身し、大空へと舞い上がっていった。
それにしても……不思議なことがあるものだな。
鹿型モンスターが暴れていたというのに、キアラたちはその存在に気づいていない。それに、姿を消したゴンザレスさん――
「……あれ?」
ここで俺は妙な点に気づく。
いくらなんでも……変なことが起こりすぎでは?
そりゃあ、これまであまり人が立ち寄ったことのない場所だから多少のトラブルはあるだろうと覚悟はしていたけど……なんというか、もうそういうレベルではない。
それに……俺は周りの調査団関係者が倒れていた理由をあの鹿型モンスターにやられたからだと思っていた――いや、正確には思い込まされていた。とてつもなくタイミングよく現れたものだからついそう結びつけてしまったのだ。
なら、これまでの違和感は一体何なんだ?
ここで何が起きているというんだ?
「まさか……無月草が原因?」
一瞬、手に持ったそれがすべての元凶なのではないかと疑ったが……それに加えてもうひとつの可能性がある。
俺たち以外の何者かが、無月草を求めてこの森へやってきているのではないか。
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