第262話 無月草を求めて
ダッテンの村で生活を始めて二日目。
ついに学園からの応援部隊が到着する。
人数はおよそ三十人。
その中には、俺からの報告を受けて急遽駆けつけたという魔法薬草学の権威――ゴンザレスさんの姿もあった。
「初めましてだね、ベイルくん。私がゴンザレスです」
「初めまして、ベイル・オルランドです」
礼儀正しくて物腰の柔らかいゴンザレスさんは、白髪に白髭、そして片眼鏡を装着しているなど、いかにも研究者っていう見た目をしていた。
彼の話によれば、すでに遠征のための準備が整っているらしく、このあとすぐにでも例の薬草を採取しに出られるそうだ。
さすがに疲れているのではと心配したが、こうなることを想定して学園を出てきたらしいので、問題ないという。さすがにフットワークが軽いな。
早速その現場へ向かおうとしたのだが――ゴンザレスさんはママラウネことミューザさんにも関心を持ったようだ。
「す、凄い……アルラウネと人間が共存しているなんて……」
物凄い熱量で迫るゴンザレスさんに、ミューザさんやホリーは若干引いている感じだったけど、悪意のある人物でないと分かるとホッとした様子だった。
「私たちがここにいられるのも、村の人たちやベイルさんのおかげですよ」
「なんと! これもまた竜樹の剣の力か……」
「そ、そんなところですね」
実際は竜樹の剣をさらに進化させた樹神の剣の力でもあるのだが……あれはこの世界において超異質の武器――あまり話を広げると変な輩に狙われる可能性もあるため、できる限り伏せておくことにしよう。
気を取り直して、俺たちはミューザさんやエドワーズ村長に別れを告げて調査隊に合流。幻の薬草――無月草があるという場所を目指して出発した。
ミューザさんの言った通り、目的地まではそれほど離れておらず、想定よりも早く現場に到着できた。
そこは砂漠地帯ではなく立派な森になっており、入ってから迷わないかどうかちょっと心配になる。まあ、いざとなったらシモーネにドラゴン形態となってもらい、上空から抜けだすという手もあるから気にしなくても大丈夫か。
問題は無月草がどこにあるのかという点。
普段は土の中にいて、地上に姿を現すのは夜空に月が浮かんでいる間の三――つまり一夜だけだという。さらに、一度地上に顔をだした無月草は、朝を迎えると同時に枯れてしまうのだ。
そのため、探す時間はかなりかなり限られていた。
幸い、学園としてもこの薬草の研究は重要視されているみたいで、可能な限りの人員が割かれている。三十名ほどだが、みんなで手分けして探せば見つかる可能性はグッと上がる。
「まだ夜までには時間がある……森の中に拠点となるテントを設営し、そこから無月草が生えていそうな場所を探すとしよう」
ゴンザレスさんの指示を受けて、俺たちはすぐさま作業へと移行。
念のため、俺やハノンは周辺の土の中をそれぞれの能力を使って調べてみるのだが……手応えは一切なし。
果たして、本当に無月草を探しだせるのだろうか……
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