第261話 砂漠の夜
俺たちはママラウネ改めミューザさんから幻の薬草がある場所を教えてもらう。
その情報をキアラの使い魔を通してスラフィンさんへと送り、彼女を通して例の魔法薬草の権威である先生とやらにも伝えることにした。
学園から調査団が送り込まれてくるのには数日を要するだろうから、俺たちはその間このダッテンの村で過ごすことに。
それを知ったエドワーズ村長は、早速その日の夜に宴会を開いてくれた。
俺としても、あれからどのようにこの町を運営していったのか気になってはいたし、ちょうどいい機会だ。
それに……ハノンも久しぶりに会えた家族とゆっくり過ごす時間が欲しかっただろう。
態度には出していないけど、母親だけでなく、姉妹である赤い髪のアルラウネ――ホリーともずっと話し込んでいたからな。
さて、今回の宴会だが、いつもとは少し違った雰囲気であった。
なぜかというと……答えは女性陣の格好にある。
エドワーズ村長の提案により、みんなこの村の伝統的な民族衣装を貸してもらい、それを身にまとって宴会に参加していたのだ。
衣装は長袖に立ち襟で、見た感じは遊牧民が着ている服って感じがする。
「どうですか、ベイル殿」
「よく似合っているよ、マルティナ」
「えへへ~」
「あ、あたしはどうなの!?」
しまった。
今の感じだとマルティナだけを褒めたようになってしまったため、キアラを筆頭に他の女性陣からも立て続けに評価を求められるスパイラルに突入してしまった。
この場合……みんなにも当然「似合っている」と告げるのだが、お世辞ではないかと疑われてしまう。なので、必死にみんなの良さを順々に言葉にして伝え、なんとか納得してもらえた。
「はっはっはっ! 若いとは素晴らしいことですな!」
そんな様子を眺めていたエドワーズ村長は大爆笑。
やれやれ……人の気も知らないで。
とりあえず、喋り疲れたのでドリンクを飲んで休憩していると、そこへミューザさんがやってきた。
「お疲れ様です、ベイルさん」
「いえいえ、これくらい日常茶飯事ですから」
「まあ。ふふふ」
品の良いご婦人のような笑い方をするミューザさん。
かつて、俺は彼女と戦ったことがある。
あの時はまあいろいろあって、竜樹の剣にヒビが入るなど被害はでたが、なんとか食い止めることができてよかったと思っている。竜樹の剣も樹神の剣という新たな力を手に入れるきっかけにもなったし。
ここへ来た当初、なんとなくだけど……ミューザさんは以前の出来事が気にしているようだった。
しかし、宴会の明るい雰囲気に乗せられたのか、心から明るい笑顔を見せてくれるようになった。やっぱり、こっちの方がいいよな。そもそも、俺は何も気にはしていないのだし。
「ベイルさん、次の料理が届きましたよ」
「早く食べに行こうよ!」
「お、おい、ちょっと」
シャーロットとアイリアに腕を引っ張られて、料理のあるテーブルへと連れていかれる。
なんともまあ……俺たちらしくていいかな。
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