第249話 勲章授与式
勲章授与式は終始厳かな雰囲気で行われた。
そういえば、俺ってクレンツ王国の国王陛下と顔を合わせるのって、今回が初になるんじゃないか?
そんなことを考えたら、余計に緊張してしまった。
……ちなみに、うちの実家の関係者は誰ひとりとしてこの授与式に出席していない。国内に身内のいるマルティナ、キアラ、シャーロットの三人は必ず誰かが顔を出しているというのに。
まあ、だからといって寂しさとかは一切ない。ディルクが俺の後釜として収まった瞬間から、もうオルランド家に未練はなかった。
周りは気を遣ってくれているようだけど……まあ、その辺が機会を見て俺から説明をしていこうと思う。
式は特にこれといった問題もなくサクサク進み、無事終了。
俺たちは控室へと案内され、しばらく待機となった。
この後、レジナルド騎士団長とディアーヌ魔法兵団長から話があるという。もしかしたら、また厄介な案件を言い渡されるのではないかと思っていたが、
「凄い……本当に勲章だわ」
「キアラさんったら、偽物なはずがないでしょう?」
「それはそうなんだけど……未だに信じられないのよ」
「私も同じ気持ちですよ、キアラちゃん」
「勲章か……ワシら人外の者にまで与えられるとは驚きじゃ。のぅ、シモーネにアイリア」
「は、はい。でも、嬉しい気持ちは一緒です」
「まあね。――って、僕を人外の方のカウントに入れてもらっちゃ困るんだけど!?」
盛り上がっている女性陣。
勲章がいかに凄い物であるかを理解しているキアラたちは感動し、それを知らないハノンたちには実感こそ希薄だが、他の三人の反応を見て凄い物であるというのは理解したようだし、それを一緒にもらえることができて嬉しいという気持ちもあるようだ。
……これでいい。
俺の毎日はこれでいいんだ。
しばらくすると、レジナルド騎士団長とディアーヌ魔法兵団長がやってくる。
新しい依頼かと思いきや、ふたりからは俺たちのこれまでの頑張りを褒めていただき、おまけにプレゼントまで用意してくれていた。
それはお揃いの食器セット。
おまけにこれは……かなり値の張る高級品じゃないか?
「ささやかな物で申し訳ないが」
「とんでもない! 大事に使わせてもらいます!」
普段使いできる物の方が、俺たちにとってはありがたい。
きっと、ふたりもそれを分かっていてこれをプレゼントしてくれたのだろう。
その後、時間が来るまで俺たちはこれまでの出来事を振り返りながら談笑。やがてふたりが仕事に戻らなければいけない時間となったため、これでお開きとすることに。
ふたりにお礼を言って部屋を出た――直後、
「きゃっ!」
「わっ!」
廊下で人とぶつかってしまう。
「ご、ごめんなさい、大丈夫ですか?」
「え、えぇ……大丈夫ですよ――ベイルさん」
「えっ? 俺の名前を……」
ぶつかったのは俺とそれほど年が変わらないと思われる女の子。身なりからして貴族令嬢らしく、その子は俺の名前を口にする――が、会ったことないんだよなぁ。
「では、失礼します」
「あっ」
呼びとめるまもなく、彼女は走り去っていった。
……一体、誰だったんだ?
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