第248話 来訪者たち
約束の時間に城から迎えの者がツリーハウスへとやってきた。
その迎えの者とは、以前、騎士団食堂の件で世話になった若手騎士のふたりだ。
「あっ! お久しぶりです!」
「元気そうで何よりだよ」
「君たちのおかげで、食堂のメニューは凄く充実しているよ。フランク料理長も感謝していたぞ」
その点に関しては俺よりむしろマルティナの方が貢献度高いだろうな。
顔見知りの騎士たちに護衛されながら、俺たちは馬車へと乗り込む。
王都の中央通りは朝市で大変な賑わいを見せていた。
そこを抜けて城へたどり着くと、すでに授与式の準備が行われている。会場には俺たちの良く知る人物も大勢駆けつけてくれていた。
「やあ、このたびはおめでとう」
「タ、タバーレスさん!?」
最初に会ったのは、貴族の中では一番お世話になったタバーレス家当主のカルバン・タバーレスさんだった。
「マルティナくん。今回、残念ながらヒューゴは参加できなかったが……勲章のことは彼も大いに喜んでいたよ」
「お父さんが……」
そう。
タバーレス家の屋敷にはマルティナの父親であるヒューゴさんが専属シェフとして腕を振るっているため、そっち絡みでも何度か訪れたことがあったな。
続いては、
「おめでとう、ベイルくん」
「スラフィンさん!」
「ママ!?」
今度はキアラの母親であり、ゲームの通りいろんな場面で助けてもらっているスラフィンさんがやってきた。
「只者ではないと思ってはいたけど、まさか勲章をもらえるまでに成長するとは……」
「これもキアラやみんなが手伝ってくれたからですよ」
「そう言ってもらえると私も嬉しいわ」
親として娘の成長を喜ばしいと感じているスラフィさん。ゲーム内に娘であるキアラは登場せず、セリフの中で存在を確認できる程度なのだが……まさか、そんなキアラとここまでの長い付き合いになるなんて想像もしていなかったな。
駆けつけてくれた人は他にもいる。
シャーロットの兄であるローレンスさんもそのひとりだ。
正直、ちょっと意外だ。
「ローレンスさんも来てくれたんですか!」
「勘違いするなよ、ベイル・オルランド。俺は妹のシャーロットだけを祝いに――」
「素直に人を褒めることができないお兄様は好きじゃありませんわ」
「よくやった、ベイル・オルランド」
清々しいまでのシスコンぶり。
相変わらずぶれないなぁ……その芯の強さが騎士としての強さにつながっているのだろう――って、そんなわけないか。
……こうして振り返ると、俺はこれまでにたくさんの人とかかわりを持ってきたんだなぁと実感する。
しかも、こうしてお祝いに駆けつけてくれるなんて、本当にありがたい。
竜樹の剣を授かって本当によかった――って、今なら心からそう言えるな。
気になる点といえば……オルランド家の関係者を一切見ていないことくらいか。
みんなもその辺は気を遣って何も言わないのだろうけど、俺としてはここまでノーアクションだと不安になってくるよ。
何もやらかさなきゃいいけど……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます