第247話 これまでを振り返る

 レジナルド騎士団長から、正式に勲章が授与されるという報告を受ける。

 そして――とうとう授与式が行われる朝がやってきた。


「ふぅ……」


 柄にもなく緊張しているせいか、あまり眠れなかった。早朝という時間帯だが、どうにも寝つけなくて俺はツリーハウスの外に出る。

 うっすらと霧が出ている地底湖を眺めながら、俺は初めてここに来た時のことを思いだしていた。


「そういえば……最初は俺とマルティナだけだったんだよなぁ」


 厳密に言うとウッドマンたちはいたけど、あれは竜樹の剣で生みだした使い魔的なポジションだからな。マルティナと一緒に考えるのはちょっと違う。


 それから、あのぽっかりと開いた天井部分からキアラが落ちてきたんだ。

 驚いたよなぁ。

 まさか、【ファンタジー・ファーム・ストーリー】のお助けキャラであるスラフィンさんの娘だったなんて。キアラとの出会いがあったからこそ、それからシャーロットとも知り合えたんだけど。


 その後、キアラの課題を手伝い、スラフィンさんの研究室へ行った際、アルラウネの種をもらったんだ。そいつが成長して――今はハノンという名の少女としてともにこのダンジョン農場で暮らしている。


 さらに、ギルドとの共同作戦でドラゴン絡みの事件に加わったけど、それがまさか竜人族のシモーネのことだったなんて。


 それから、ハリケーン・ガーリックを求めて嵐の谷を訪れた時には、アイリアが加わった。

 そういえば、俺は彼女に狙われていたんだったな。あの時は本当に肝を冷やしたよ……何事もなくて本当によかったよ。


 仲間が増えてからも、いろんな出来事があった。


 霧の魔女。

 砂漠のアルラウネ。

 温泉による竜樹の剣の進化。

 そして今回のローダン王国の件。


 どれもこれも、俺ひとりでは達成しえなかった。

仲間がいてくれたからできたことだ。

 その成果を国王陛下から直々にしてもらえる――それはきっと、この国に生きる者にとって最高の栄誉だろう。

 だからこそ、未だに実感が湧かないんだろうな。

 それと……気になるのは実家であるオルランド家の動きだ。

 きっと、すでに俺が勲章を授与されるという事実は耳に入っているだろう。正直、辞退しろと強要するため、使者のひとりでも送ってくるかと思ったが、今のところそうした事態には至っていない。


 さすがに、ここで事態を急転させるような動きを見せれば、オルランド家に不信感を持つ者もいるだろう。

 後継ぎがディルクに変わったが、そのディルク自身はここまで学園内でも目立った功績をあげていない。……いや、学園祭の時の様子を見る限りでは、目立つと言っても悪目立ちをしている印象を受けたな。


 いずれにせよ、式が終わるまで何もなければいいのだが。


「ベイル殿~」


 名前を呼ばれ、ハッとしながら振り返ると、ツリーハウスの前で手を振っているマルティナの姿が飛び込んできた。


「朝食の準備が整いましたよ~」

「わ、分かった。すぐ行くよ」


 どうやら、深く考えているうちに時が経ち、みんな起きてきたようだ。

 きっと、朝食を終える頃には城からの迎えが到着するだろう。

 それまでにもっとリラックスしておかないとな。

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