第244話 評価
ローダン王国での一件にケリがつき、俺たちはダンジョン農場に帰還。
「おかえりなさいませ、みなさま」
「「「「「キキーッ!」」」」」
「ただいま、クラウディアさん、それにみんなも。留守中に変わりはありませんでしたか?」
「これといって特には」
「ならよかった」
何より平和が一番だ。ちょっと前までは国の存亡にかかわるほどのクーデターに巻き込まれていたと考えたら、それが余計に身に染みる。
「では、先にお風呂で汗を流しますか?」
「うん。そうしようかな」
これには女性陣からも「賛成!」の声が飛ぶ。
まずは旅の疲れと汚れをしっかり取り、それからのんびりと夕食へ移る。
これがスムーズにできるのも、クラウディアさんやウッドマンたちのおかげだ。
――こうして、また平穏な日常が戻ってきた。
今後は特別な案件もないし、のんびり農作業に専念できる……と、思っていたのだが、どうやらローダン王国での一件に関する余波は俺たちの想像を遥かに超える勢いで広まっているようだった。
それを実感したのは、次の日――収穫した野菜を届けるため、ドリーセンの町を訪れた時だった。
……なんだろう。
町の人たちの視線が俺たちへ向けられている気がする。
「今日は随分と人気者のようじゃのぅ」
「や、やっぱり、注目されていますよねぇ……」
ついてきたハノンとシモーネのふたりも、周りの視線に気がついているようだった。
俺たちが何かやらかしたのだろうか。
不安を抱いていると、ひとりの男が近づいてきた――顔見知りの商人だ。
「聞いたぞ、ベイル!」
彼は興奮気味に俺たちへ声をかけてきた。
「え、えっと、何をですか?」
「決まっているだろ! ローダン王国の件だよ! なんでも、クーデターを防ぐのにひと役買ったんだってな!」
「えっ!?」
すでにその話が広まっていたのか。
広めたのは間違いなくグレゴリーさんだろうなぁ……そう思って、商会を訪れた際に聞いてみると、
「当然、俺だ」
あっさりと認めた。
「今回の件はすでに王都でも話題沸騰らしいぞ」
「お、王都で?」
「これについては俺じゃなく、うちの商会のヤツが戻ってきて早々に王都へと出向き、噂を仕込んで来たらしい」
そういう根回しもやっているのか。
さすがは特務騎士にまで選ばれるだけはある――のかな?
ちなみに、今回の件の報告についてはグレゴリーさんに一任していた。
勲章に興味がないわけじゃないけど、今は正直、関心が薄れてしまっているという状態かな。それだけ、日常が充実しているってことなのだろうけど。
「しかしまぁ、ここまでの騒ぎになると勲章授与が現実味を帯びてきたな」
グレゴリーさんとしては商会の評判にもつながるから大歓迎なんだろうけど……オルランド家を追放された身である俺には、なんだか余計なトラブルを招きそうな気がしてならなかった。
――まあ、さすがに考えすぎだと思うけど。
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