第242話 クーデターの結末
ついに俺たちはクーデターの首謀者であるアドウェル王子の身柄を確保した。
彼の野望に加担した一部の騎士たちも拘束され、事態はなんとか解決という結果を迎えることができたのだ。
別行動を取っていたシモーネとアイリアも合流し、さらにはグレゴリーさんたちも戻ってきた。
「さすがです、ベイルさん!」
「やっぱり君ならできると思っていたよ」
「でかした、ベイル!」
合流した途端にシモーネ、アイリア、グレゴリーさん、そして商会の人たちからもみくちゃにされる。手荒な祝福だなぁと思いつつ、悪い気はしない。
一方、みんなから少し遅れて報告を受けたサリーナ姫も城へやってきた。
アドウェル王子や騎士たちの処分については、彼女が直接伝えるだろう。
とはいえ、今回の件でアドウェル王子側につこうという人はもういなくなったんじゃないかな。それだけ、サリーナ姫側につく者たちの優秀さと王都での人気の違いが出たわけだし。
「みなさん、このたびは本当にありがとうございました」
「そんな……俺たちは別に……」
「何を言う! 君たちがいなければ今ごろどうなっていたことか……本当に心から礼を言うぞ!」
今度はシュルツさんに肩をバシバシと叩かれながらお礼を言われる。
まあ、今回はまさかクーデターが起こるなんて思ってもみなかったし、なんだか流れのままに協力したって感じだったからいつもより実感がないんだよねぇ。
最初からクーデターを鎮圧してほしいって依頼ならまた違うんだろうけど、そもそもそんな依頼だったら絶対に受けないし。
――って、それで思い出した。
俺たちはそもそもこの雪と氷に覆われたローダン王国に農業を広めようとしていたんだった。
その方法として、いわゆる施設農業を提案したのだけど、今回のクーデターによって中断されたままになっている。
当然、これについてはサリーナ姫も覚えており、
「それではベイル殿、あなたが考案した新しい農業の形について……さらに話を進めていただけますか?」
「もちろんです!」
姫様から直接依頼を受けて、仕事に取りかかろう――としたのだが、さすがに今日はもうヘトヘトだし、そもそも周りの騎士たちの忙しなさを見ていると実行できそうになかった。
というわけで、作業は翌日改めて行われる運びとなったのだった。
その日の夜。
サリーナ姫のご厚意により、俺たちにはそれぞれ個室が与えられていた。
町の宿屋で泊まろうかと思っていたら、今日のお礼だと夕食にも招いてもらい、嬉しいサプライズとなった。
ちなみに、その食事の席でサリーナ姫が何気なく、
「ベイル殿にはぜひともこのローダンにとどまっていただきたいですね」
と口にし、それに対して護衛をしていたシュルツさんが、
「彼が姫様と結婚すればよいのでは?」
と冗談半分に返し、さらに姫が、
「それは名案ですね」
などと乗っかってしまったため、うちの女性陣の空気はとんでもないことになったのだが……まあ、うん、それはよしとしよう。
――後が怖いけどね。
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