第241話 王子の最後
アドウェル王子は地下室のどこかにいる。
それが発覚したことで、調査の範囲はグッと狭まった。
しかし……肝心の王子の姿は未だに発見できず。
「一体どこへ行ったんだ……」
「これだけ捜してもいないとなったら、他にも隠し部屋や階段があるのかもしれませんわね」
シャーロットからの指摘は――なるほど。もっともだ。
俺は再び竜樹の剣を使い、周辺を調べていく。この中に王子の気配があるのだから、王子自身もこの場にいると思っていたのだが……どうやら、少し誤りがあったようだ。
「……微妙に魔力の位置がズレているみたいだな」
「じゃあ、王子はやっぱりここからさらに別の部屋へ逃げたってこと?」
「その可能性が高い――うん?」
キアラと話している時、俺は部屋の違和感に気がついた。
それは、目の前にある本棚から放たれている。
「? その本棚がどうかしたの?」
「いや、これって……」
冷静になってみると、明らかにこの部屋の雰囲気に合わないよな、これ。中に入っている本にはタイトルも書かれていないし……って、これ全部固定されているじゃないか。
「妙だな……」
見れば見るほど怪しく思えてくる本を調べようと、触れた瞬間だった。
再び大きな横揺れが発生し、突如本棚が下へと動きだす。
何もなくなったその壁をよく見ると……周りと同じ色で塗られているため気づきにくかったが、ドアが存在していた。
「どうやら……ここが本当の隠し部屋ってわけのようだ」
地下室と外へつながる隠し階段。
このふたつは、追手をまくためのトラップに過ぎない。
本命は――こっちのようだ。
部屋へ入ると……ついに捜していた人物と出会えた。
「ぐっ! お、おまえら……」
剣を手にし、俺たち睨みつけるアドウェル王子。抵抗するつもりらしいが、すでに彼の配下となっていた若い騎士たちは全員捕えた。彼ひとりが躍起になったところで、もはやどうにもならないだろう。
「クーデターは失敗に終わったようですな」
シュルツさんが一歩前に出て、そう告げる。
「し、失敗だと!?」
「我々がこの場にたどり着いたことですでにお分かりのことと思いますが……すでにあなたが頼りとしていた兵力はすべて消滅しました。もう、この場であなたに力を貸そうとする者はいません」
「っ!?」
冷静に事実を述べていくシュルツさん。
その言葉を耳にして、ついにアドウェル王子は観念したらしく、剣を手放してその場に膝から崩れ落ちた。
こうして、ローダン王国の王位継承を巡る戦いは幕を閉じた。
――しかし、随分とあっさりだったな。
周りは王子の野望を打ち砕けて歓喜に沸いていたものの、俺にはまだ何か裏があるのではないかという気がしてならない。
まあ、ただの思い過ごしであるのならそれに越したことはないのだけど。
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