第240話 仕組まれた罠
足を踏み入れた、誰も知らないローダン城の地下。
一体何が潜んでいるのか……まったく先の読めない展開だけど、分かっていることがひとつだけある――それは、アドウェル王子を追い込んだってことだ。
しかし、手負いの者ほど吹っ切れて何をするか分からない。
アドウェル王子も、ダメだと分かった途端にどのような行動をするか……普段の振る舞いがだいぶアレなので、そこがめちゃくちゃ不安なんだよな。
だが、進まないことにはどうしようもない。
俺たちは周辺を警戒しながら少しずつ調べていく。
「誰かがいた形跡はあるけど、肝心の本人の姿が見えないわね……やっぱり、この奥が緊急用の脱出口になっていて、そこから城外へ出たんじゃないかしら」
キアラの考察が、もっとも可能性の高い事態と言えるだろう。
かといって、この先に何も罠が仕掛けられていないとも限らない。
となると……ここでも竜樹の剣が役に立つ。
「ちょっと待っていてくれ」
俺はいつものように剣を地面に突き刺すと、地中に根を広げていき、魔力を通じて周囲の状況を探った。
その結果――
「どうやら、特にトラップの類は仕掛けられていないようだ」
「ならば、すぐにでも部屋の奥へ向かおう!」
シュルツさんを先頭に、ベテラン騎士たちが一気に部屋の奥へと雪崩れ込んでいく。
すると、開け放たれたドアを発見した。
その先には地上へとつながる階段がある。
「遅かったか……ここから外へ出て行ったようだ」
「すぐに追いかけよう!」
騎士たちは逃げたアドウェル王子を追うため、外へ出ようとする――が、実はそれこそが罠だった。
「待ってください」
「っ! な、何かあったのか?」
「これはアドウェル王子の仕組んだ罠です」
「何っ!?」
シュルツさんたちは一斉にドアから離れる――が、仕掛けられた罠というのは、たとえばドアが爆発するとか、そういった攻撃的なものではない。そもそも、アドウェル王子にそのようなトラップを仕掛けられるスキルはないのだ。
では、一体何が罠だというのか……答えは実に簡単なもので、
「アドウェル王子はまだこの部屋にいます。開け放たれたドアは、地上へ逃げたと思わせるためのカモフラージュですよ」
「な、なぜそのようなことが……」
「竜樹の剣で辺りを調べた時、まだこの部屋にアドウェル王子の魔力が残っていました。もし、本当に外へ出たというなら、とっくに消え去っているはずなんです」
「なるほど! わたくしたちが逃げたと思い込んで外へ出て行った後、ここからこっそり抜け出るつもりでしたのね!」
ポンと手を叩いて納得してくれた様子のシャーロット。
さらに、マルティナが続く。
「竜樹の剣でそこまで分かるなんて……やっぱり、ベイル殿は凄いです!」
「俺が凄いんじゃなくて、剣の性能が凄いんだよ」
「でも、それを使いこなしているのはお主自身じゃろう?」
ハノンのフォローを聞き、みんな「うんうん」と頷く。
……そう思ってくれているのなら、俺としても嬉しいよ。
さて、気を取り直して――俺たちは地下室のどこかに隠れているアドウェル王子は捜すため、再び動きだすのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます