第227話 不穏な気配
ローダン王国騎士団の不審な動き。
一部の騎士たちが、任務を放り投げて一ヵ所に集まり始めているという。
「シュルツ隊長……あれは一体?」
「申し訳ありません、姫様……私は何も聞いておりません」
困惑するサリーナ姫と、彼女の護衛部隊隊長を務めるシュルツさん。サリーナ姫はともかく、現役の騎士であり、隊長職を任されるほどのシュルツさんが何も聞かされていないというのはどうにも不可解だ。
「少し様子を見て参ります」
俺たちにそう告げて、シュルツさんはケビンさんを含む数人の部下を率いて外へと出ていく。
「だ、大丈夫かな……」
「心配ですぅ……」
「あそこにおる騎士たちの雰囲気は少々妙じゃからのぅ……何事もなければよいのだが」
アイリア、シモーネ、ハノンからは心配する声が。
まあ、無理もないか。
この国に初めて来た俺たちでさえ、異様な気配をビンビン感じるのだ。長らくこの地で騎士を務めているシュルツさんやケビンさん、さらにはサリーナ姫にはとんでもない異常事態に映るのだろう。
「そこで何をしているのだ」
シュルツさんが先頭に立って、集まっている騎士たちに声をかける。それに反応して振り返った騎士たちは――なぜか薄ら笑いを浮かべていた。
「これはシュルツ殿、どうされましたか?」
一番近くにいた若い騎士が言う。
「どうされたも何も、なぜ職務を放棄してこのような場所に集まっているのかと聞いておるのだ」
「あぁ、その件ですか。それについてですが――これが答えです!」
若い騎士は会話の途中で剣を抜き、シュルツさんへと襲いかかった。完全な不意打ちかに思われたが、そこは経験豊富な護衛隊長。相手の不自然な動きを事前に察知し、すぐさま対応してみせた。
剣と剣がぶつかり合う不快な音が辺りに響き渡る中、味方同士で戦っているという現実に気づいたケビンさんたちが抗議の声をあげる。
「やめろ! 何を考えているんだ!」
「すぐに剣を収めろ!」
同行していた騎士たちも剣を抜き、若い騎士へと向ける。
だが、次の瞬間――若い騎士の背後に控えていた他の騎士たちが一斉に剣を抜き、形勢が逆転した。
「な、何がどうなっているんですか!?」
「味方同士のはずじゃ……もしかして、誰かに操られている?」
「それはないわ」
俺の疑問をあっさりと否定したのはキアラだった。その横ではシャーロットもうんうんと頷いている。
「彼らからは一切魔力を感じないのよ」
「つまり、魔法で操られているというわけではなく、彼らは自らの意思で反抗しているようですわ」
「な、なんだって……」
どういうことなんだ?
なぜ彼らはあんなマネを?
見えてこない真実を追い求めようとしていた俺の脳裏に、ふとある人物の顔が浮かんできた。
「まさか……アドウェル王子か?」
あの場にいる騎士たちはみんな年齢が二十代前半から半ばくらいと若く、彼らが独断で反乱を起こしたとはどうしても思えなかった。
もっと裏にある、強力な力が彼らを操っている――俺はそう感じた。
それにしても……どうやってこの事態を乗り切るか。
今はそちらに専念しなくてはならないな。
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