第222話 変化する状況

 極寒の地であるローダン王国で農業をする方法。

 実現にはさまざまな問題点があるものの、俺はそれらを一気に解決できる可能性のあるアイディアを思いつく。


 すぐさまサリーナ姫様へ報告を――と、思ったが、まずはグレゴリーさんに相談してみることにした。


「ふむ……なかなか面白い試みだな」


 ライマル商会が拠点としている宿屋の一室。そこで書類整理をしていたグレゴリーさんのもとを訪れ、早速この話を持ちかけた。


 ちなみにその方法とは――雪や氷を気にせずに農業をするための屋内施設を造るというものであった。言ってみれば、常に温かさをキープできる温室的な施設園芸農業に取り組もうというわけだ。


 この世界には、魔力で熱を発する魔鉱石がある。

 一般的な家屋ではそれを有効活用し、冬でも室内温度が快適な状態を保つができているのだという。

 俺はこれを農業に転用できないかと考えたのだ。

 

 これに対し、グレゴリーさんの反応も上々だった。

 しかし……同時に課題も目白押しだ。


 何せ、前例のない試みとなる。

 理論的にはこれで問題なく農業はできるようになると思うのだが……最大のネックとなるのは「どうやってその施設を造るのか」にある。


 こればっかりは職人の腕によるだろうな。

 ローダン国内に腕利きの職人がいてくれたら、すぐさま解決できるのに。

 グレゴリーさんに心当たりはないか尋ねてみたのだが、


「うーん……こっちにはその手の職に長けている人物がほとんどいなくてなぁ。いたとしても、ベイルの言ったような施設を造るには人手もいる。完成するにはかなりの日数を要するだろうな」


 現実的な問題が進行を阻む。

 人手不足、か。

 そもそもクレンツ王国からは離れているし、あちらの国としても職人の流出につながる恐れがあるから積極的に協力をしてくれる可能性は少なそうだ。騎士団長のレジナルドさんや、魔法兵団のディアーヌ団長に声をかけようかとも考えたが……望み薄か。


 そうなると、やはり人材や資材はローダン国内から調達する必要がある。

 

「我々も情報を集めてみるが……狙い通りとはいかないだろう」

「分かりました。ありがとうございます」


 ライマル商会が手を貸してくれるってだけで、大助かりだ。

 それに、こういうのはそもそも王家が協力をしてくれなければ成立しない。


 俺はみんなを連れて再び城へ行くことを決める。

 サリーナ姫に事情を話し、国民へ呼びかけてもらうためだ。


 グレゴリーさんにもそれを伝え、宿屋を出ようとした時――ロビーで武装した数人の騎士たちを目撃する。制服から、ローダン王国騎士団と思われた。

 彼らは俺たちを発見すると無言で近づいてくる。

 ――って、目的は俺たちなのか?


「あなたがベイル・オルランドですな?」

「は、はい」

「では、単刀直入に申しますが――貴殿の仲間たちにはこのローダン王国から即刻出ていってもらいたい」

「えっ!?」


 有無を言わせぬ退去勧告。

 一体、何が起きたっていうんだ?





…………………………………………………………………………………………………



新作をはじめました!

異世界転生×開拓×追放×ハーレム!

もふもふもいるよ!


【魔境暮らしの転生予言者 ~開発に携わったゲーム世界に転生した俺、前世の知識でトラブル回避していたら「奇跡の予言者」として英雄扱いをうける~】


https://www.alphapolis.co.jp/novel/559352328/621701375


是非、読んでみてください!

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