第221話 打開策

 翌日。


 この日、俺たちはケビンさんにある場所へと案内された。

 そこはサリーナ姫が農場として活用しようとしている平野であった。

 平野は平野なのだが……いかんせん、積雪量がとんでもない。さすがにこの状態のままでは農業など不可能だった。


「この雪の下には地面があるんですよね?」

「えぇ。……ただ、年間を通して地面を見る機会はないかと」

「一年を通して土が見られないなんて……さすがにその条件だと農業はできないんじゃないかしら」


 キアラの口から飛びだす真っ当な意見。

 ……問題なのは、地面が露出していないというだけではない。


 最大の難敵はこの低すぎる気温だ。気温が低いということは、太陽の明かりが届かないということ――これが厄介なのだ。


「やはり……難しいでしょうか」

「普通に考えれば、そうですね」

「あなたの竜樹の剣の力をもってしても、ですか?」

「……そのことについてですが――ひとつ提案があります」

「えっ?」

「これについては、サリーナ姫にも直接伝えたいのですが……」

「っ! す、すぐに準備を!」


 ケビンさんはドタバタしながら城へと戻っていった。あの調子なら、それほど時間をかけずに答えが返ってきそうだ。


「提案と仰いましたが、本当に可能なんですの? 正直言って、あなたの持つ竜樹の剣の力をもってしても、この環境で農業は難しいと思うのですが……」


 さっきの話を聞いていたシャーロットが、不思議そうな顔をしながら尋ねてくる。

 他のみんなも、考えは同じのようだ。


 不安そうなシャーロットたちに、俺は努めて明るく答えた。


「大丈夫。もうちゃんと打開策は練ってあるから」


 ――確かに、俺の竜樹の剣の力でも、この環境下で農業を行うことは不可能だろう。

 百歩譲って、俺がこのローダン王国に居着き、毎日きちんと手入れをしていればできないことはないかもしれない。


 だが、現実的にそれは不可能だ。


 せめて、ここにも砂漠にあるオアシスのような存在があれば――そう思った時、俺はある発想に至った。


 ないのなら、作っちゃえばいいのだ。


 竜樹の剣がその力を十分発揮できる環境を自分たちで生みだす。

 それができれば、この国でも農業は十分に可能だ。


 ここで問題になるのはその方法。

 どうやって理想的な環境を生みだすか……そこが焦点となる。


 しかし、そこもすでに対策を考えてある。

 唯一の問題点は、この話にサリーナ姫が乗ってくれるかどうかだな。


「随分と自信満々じゃな」


 不意に、ハノンがそんなことを言う。


「ワシらに聞かせてはくれないか? ――その打開策とやらを」

「当然だよ」


 ハノンのリクエストに応えるため、俺はみんなを集めて提案の内容を発表する。


「そ、そんなことが……」

「可能なんですの!?」

「でも、それが実現できたらいろんな問題が一気に解決するよ!」

「まさに夢のようなプランだね」

「……問題はベイル自身が危惧しているように、サリーナ姫がこの話に食いついてくるかだけじゃな」

「き、きっと大丈夫ですよぅ」


 驚きつつもみんな賛成してくれたようだ。

 さて……サリーナ姫はどう答えるかな?

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