第209話 新たな案件
生まれ変わった竜樹の剣の制御は日に日に安定していった。
ただ、こいつは確実にこれまで愛用していた竜樹の剣よりも強い力を持っており、その力をどこまで制御できるのかは未知数だ。
底知れない実力――原作でもある「ファンタジー・ファーム・ストーリー」の中でも禁忌とされていた樹神の剣と同等の力を秘めているとなったら……俺が扱っていて大丈夫なのかという不安も出てくる。
だが、その一方で、この力を農場発展のためだけに使っていれば問題はないかなという考えもあった。
楽観視していると捉えられてしまうかもしれないが、まあ、実際その通りだから仕方がない。
この日は朝からライマル商会へ持っていく野菜をみんなで収穫。
午後になると、マルティナ、キアラ、アイリアの三人はダンジョン探索へ。
シモーネはシルバークックたちのお世話に、ハノンは地底湖から栄養を吸収しつつ、農場の管理。さらにクラウディアさんはウッドマンたちと家事に勤しむ。
――というわけで、今回ライマル商会へ向かうのは俺とシャーロットのふたりとなった。
「それではまいりましょうか、ベイルさん」
「おう」
シャーロットはすっかりこちらでの生活にも慣れたな。
最初に来た頃は何をやるにもメイドのクラウディアさんがいないとダメだったが(本来の貴族の生活がそんな感じだし)、今ではもうひとりで何でもできる。
クラウディアさん自身も、自分のもとから成長して離れていくシャーロットの姿に喜びを感じているようだ。
仕事にならないんじゃないかとも思ったが、どうもここでの暮らしの一部始終をブラファー家に報告する役割を担っているらしいことが最近になって発覚した。
それはブラファー家の両親だけじゃなく、兄であるローレンスさんも絡んでいそうな案件ではあるが……真相は闇の中だ。
「どうかしまして?」
「いや、何でもないよ」
そんなことを考えているうちに、商会の目前までやってきていた。
これから中へ入って、グレゴリーさんに野菜を渡そうとした時、突如商会のドアが勢いよく開かれる。
「きゃっ!?」
「危ない!」
驚いて転倒しそうになったシャーロットを何とか抱きとめ、事なきを得た。それにしても……あんなに強くドアを開けるなんて、何を考えているんだ?
俺が抗議をしようと振り返ると、
「申し訳ありません! 急いでいたもので!」
そこにいたのは二十代前半くらいの年齢をした青年だった。
着ている服は恐らく騎士団の制服と思われるが……クレンツ王国騎士団のものとはデザインが異なる。ひょっとして、他国から来た人なのか?
「待てよ、ケビン。少し落ち着け――って、ベイル?」
青年のあとを追って商会から出てきたのはグレゴリーさんだった。
その口ぶりから、このケビンさんという青年とは顔見知りらしい。
「一体何があったんですの?」
「かなり慌てていたようですけど……」
俺とシャーロットが尋ねると、グレゴリーさんは何も答えず、ニコッと微笑んだ。
……なんだろう。
あまりいい予感がしない。
「紹介するよ、ケビン。彼らが先ほど話した、ダンジョン農場の者たちだ」
「っ!? ま、まさか!? こんな少年たちが!?」
ケビンさんはかなり驚いているようだが……やっぱり、あの笑顔の裏には俺たちに絡んだ案件が舞い込んだってことからだったのか。
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