第204話 合流

 その場の勢いとはいえ、演劇部に続いて料理部のお困り事も解決。

 彼女たちにとって思い出に残る学園祭となったようで何よりだ。

 料理部の面々に深く感謝され、彼女たちを見送った頃にはすでに夕方となっていた。


「もう夕方だけど、今から作って間に合うのか?」

「あの子たちは夜の部に出店予定だから、その点は心配ないと思うわ」

「なるほど」


 夜の部、か。

 いわゆる後夜祭ってヤツかな。

 ますます前世であった文化祭を思い出す。


「――って、そうだ。そろそろ他のみんなと合流をしないと」


 いろいろとトラブル続きでうっかり忘れていた。マルティナやシモーネたちは、学園祭を楽しめているだろうか。シャーロットが案内役をしているというから、大丈夫だとは思うけど。


「今、みんなどこにいるんだろう?」

「心配なら見てくるといい。こっちはもう終わったからな。……それに、もうディルクに遠慮する必要はないだろ?」


 ウィリアムスさんがそう声をかけてくれた。

 ……確かに、さっきみたいなことがあった直後とあっては、ディルクも俺に絡みづらいだろうし、そもそもすでに会場を去っている可能性も高い。


 ――夜の部は、俺も楽しませてもらおうかな。


「そうしましょうよ! きっとみんなも喜ぶから!」

「……じゃあ、行ってみようかな」


 テンションの上がっているキアラもこう言ってくれているし、俺個人としてもこのゲーム内で行われる学園祭の詳細を知りたかった。実際の参加者としてだけでなく、純粋なプレイヤー目線でも楽しめそうだし。


「そうと決まったら、早速案内するわ」

「頼むよ、キアラ」

「楽しんで来いよ」


 ウィリアムスさんに背中を押される形で、俺はキアラの背中を追いかけた。



 学園祭のメイン会場となっている中央広場は、昼間からさらに人が増えてにぎわっていた。キアラの話では、料理部が主催する屋台をはじめ、夜に来なければ味わえない楽しみもあるのだという。


「シャーロットたちは今どこにいるんだろう?」

「こういう時のために待ち合わせ場所を事前に決めておいたのだけど――あっ、噂をすれば」


 キアラの指さす先には、広場に設置された飲食用の席に集まり、今まさに食事中のシャーロットたちがいた。


「あら、ようやくご到着ですか――って、ベイルさん!?」


 驚くシャーロット。

 貴族である彼女は俺とディルクの関係を他のメンバー以上に知っているからな。そんな俺がこうして学園内に足を運んだことにビックリしたようだ。

 そのディルクとの関係に、大きな変化が現れた。

 ヤツは、それまで最強と信じて疑わなかった神剣の力がまったく通じないことへ憤りを感じている。


 心を入れ替えて、真面目に鍛錬を始めるか。

 それとも、さらに深い闇の底へ落ちるか。


 神剣を授けられた者として、ここからの行動は今後のディルクの人生を大きく左右するものとなるだろう。


 一方、俺は進化した竜樹の剣を携えて、本格的に後夜祭が始まる前にみんなとスラフィンさんのもとを訪れることにした。

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