第203話 お悩み解決!
農場に現れた学園の女子生徒たち。
にぎわう学園祭を抜けだした彼女たちは、何を求めてここへやってきたのか――話を聞いてみると、
「実は、私たち料理部の学生なんです」
「料理部?」
「はい。今日はこの後で、学生や先生たちに屋台で料理を振る舞う予定だったんですけど……」
徐々に声が小さくなっていく説明役の女子。
よく見ると、涙ぐんでいるようだが……何とか踏みとどまり、改めて説明をしてくれた。
屋台で振る舞うはずだった料理に使う野菜。それらを乗せた荷車が横転してしまい、野菜のほとんどが近くの池に落ちてしまい、使えなくなってしまったという。
こうなっては中止を余儀なくされる――が、彼女たちはどうしてもあきらめきれず、学園が管理する農場へ野菜を分けてもらえないかと頼みにきたのだ。
だが、彼女たちにとって誤算だったのは、農園と呼ばれてはいるものの、ここは薬草専門であるということだった。ひどく落胆した料理部の面々――しかし、農場の管理人であるウィリアムスさんから有益な情報がもたらされる。
――竜樹の剣を持つ、俺の存在だ。
「あなたなら、野菜を用意できると聞いて……」
最終的には涙声になっている女子生徒。
その涙を目にしてしまったら……協力をしないわけにはいかないな。
「……ウィリアムスさん」
「何だ?」
「農場の一部を貸していただきたいのですが」
「構わんよ。――存分にやってくれ。こいつが必要な野菜のリストだ」
「ありがとうございます」
さすがはウィリアムスさん。
こちらの意図を読み取り、即座に快諾してくれただけでなくリストまで渡してくれるとは。俺としても、さっきのディルクとの戦闘――とは呼べないけど、とにかく魔力が高ぶっていてしょうがなかったからな。発散させるいい機会をもらったよ。
俺は農場の空きスペースを見つけ、そこの地面に竜樹の剣を突き立てる。
やがて、剣を通して魔力が地面へと染み渡っていき、それはとんでもないスピードで野菜を育てていく。
……あれ?
なんか、今までよりもスムーズにやれている気がする。
あの温泉で復活してから、以前よりも魔力が増して少し扱いづらさがあった。しかし、今は亀裂を修復する前よりもかえってやりやすくなったようにさえ感じる。さっきのディルクとのやりとりで、知らぬ間にコツを掴んだのか?
そんなことを考えているうちに、リストの野菜はすべて完成。
まあ、今回は規模もかなり少ないから短時間でも味に変化はないはずだ。
試しに、フレイム・トマトのひとつを女子生徒たちに食べてもらう――と、
「「「「おいしい!!」」」」
表情は上々。
これなら、彼女のたちの屋台でも振る舞ってもらえそうだ。
「ほ、本当にもらっていいんですか!?」
「まあ、今回は特別サービスだ」
「「「「ありがとうございます!!」」」」
女子生徒たちは深々と頭を下げると、すぐに野菜の収穫を始める。そのうちのひとりが応援を呼びに校舎の方へと駆けだしていったので、俺やキアラ、さらにはウィリアムスさんも総動員で作業へと取りかかる。
「何から何まですいません……」
「気にしなくていいよ。困った時はお互い様だ」
おかげで、新しい竜樹の剣のコツも掴めたみたいだし、スラフィンさんにはいい報告ができそうだよ。
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