第197話 暴走
もはや見過ごせないレベルで好き勝手暴れているディルク。
これまで抑圧されていた感情が、神剣を手にしたことが暴走しているように映った。
「ベイル……」
何とかならないか――ひと言も発してはいないが、こちらの見つめるキアラは雄弁にそう物語っていた。
俺としても、ジェニーを助けてやりたいとは思うが……やはり、それを実現しようとしたら、ディルクの前に姿を見せる必要があるか。それを懸念しているから、キアラは声に出して俺に言わなかったのだろう。
――ただ、もう黙ってはいられなかった。
「……ジェニー」
「は、はい」
「さっき言っていた、本来の君の相手役はすぐにでも劇に出られる状況?」
「え、えぇ……舞台演出の手伝いをする予定になっていますし、衣装もちゃんと用意してあります」
「なら、彼に伝えてくれ。――念のため、劇に出る準備をしておいてくれって」
「ベイル!?」
ジェニーより先に反応を見せたのはキアラだった。
彼女は、俺とディルクの関係性をよく知っている。
だからこそ、俺がジェニーにそう告げたことが何を意味しているのか、よく分かっているのだろう。
「で、でも、どうやって……」
「俺がディルクを説得する。――とはいえ、確約はできないけど」
果たして、ヤツがどれだけ俺に執着心を残しているか……そこが鍵だ。
ただ、過去のやりとりを思い出すと、ディルクはこちらの誘いに乗ってくる可能性が高いと踏んでいた。
「キアラ、ディルクは今どこにいる?」
「た、たぶん、学園を見て回っているのだと思うけど……」
「なら、俺を案内してくれ」
「おっと! ちょっと待った!」
三人で話していると、急に野太い声が乱入。
すっかり忘れていた農場管理人のウィリアムスさんだった。
「まったく、あれだけの雑草を捨てるのにどれだけ時間がかかっているんだと心配して来てみれば……女子と仲良くトーク中とはねぇ」
「あっ、いや、これは……」
「――行ってこい」
「えっ?」
ウィリアムスさんはニカッと笑って、
「ディルク・オルランドにガツンとぶちかましてくるんだろ?」
「ガ、ガツンといくかどうかは……」
「あれだけのひねくれ者には脳天に一撃かましてやらなきゃ伝わらん。それができるのは君くらいのものだ」
いや、俺がやっても普通に問題だと思うけど……でも、そう思ってしまうくらい、ウィリアムスさんもディルクの言動には怒り心頭ってわけか。
あと、神剣使いという立場から、学園でヤツにキツく言える存在はいなかったのだろうな。バックにはオルランド家もかかわっているし、下手に大事にしたら自分たちの家がどうなってしまうか分からない。
そう考えると……ウィリアムスさんの言う通り、ディルクへ抵抗できるのは俺しかいないのかもな。
「と、とりあえず、ディルクの暴走を止めてきます」
「頼んだぞ」
俺とキアラ、そしてジェニーの三人は、ウィリアムスさんに送りだされる形になって学園祭の会場へと向かった。
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そちらもお楽しみに!
それでは、よろしくお願いします!!<(_ _)>
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