第193話 相談

 パワーアップした竜樹の剣を使いこなすため、スラフィンさんにアドバイスをもらおうとした俺は、再び仲間たちとともに学園へ向かうことにした。


 しかし、ここで問題が発生。

 キアラとシャーロットが、ある男に狙われているというのだ。

 その男というのが――俺の従弟のディルクだった。


「ディルクが狙っているって……ライバルってこと?」

「私やシャーロットを口説こうとしているのよ」


 やっぱりそっちの意味だったか。……いや、まあ、そうだろうなとは思っていたけど、まさか本当に口説いているとは思わなかった。

 ――ていうか、ふたりっていうのはどういうことだ?


「そのままの意味ですね」

「うわぁっ!? ク、クラウディアさん!?」


 俺たちの会話に割って入ったのはメイドのクラウディアさんだった。


「学園でのディルク様の様子を見る限り……本気でフォンテンマイヤー家とブラファー家のどちらかと関係を深めていこうという下心が透けて見えます」

「下心って……」


 しかし、オルランド家としてふたりの実家に近づこうとする考えは分かる。

 ――だが、肝心のふたりのリアクションはというと、


「「…………」」


 非常に嫌そうな顔でクラウディアさんの話を聞いていた。

 そういえば、キアラはディルクに対して嫌悪感を抱いているんだった。シャーロットも似たような感じだな。

 どうやら、神剣を授かったことで未だに学園ではデカい顔をしているらしい。シャーロットのいう立場というのは、それが原因だろう。


 ふたりが渋い表情をする中、クラウディアさんの説明が続く。


「実は、彼は今回の学園祭の実行委員に名を連ねているのです」

「えっ? 実行委員に?」


 それは確かにまずいな。

 顔を合わせる機会が増えてしまうな。


「それでは……今回の遠征は中止にした方が……」


 そう切りだしたのはマルティナだった――が、めちゃくちゃ残念そうな表情をしているな。なるべく察知されないように笑顔を浮かべているのだが、いつもの自然な笑顔とは程遠く、どこか引きつっているように映った。


 ……学園祭ってヤツを体験したかったんだろうな。

 それはマルティナだけでなく、ハノン、シモーネ、アイリアの三人も同じようだった。

 俺としても、できれば早くに学園へ行きたいという気持ちはあった。

 先延ばしにして、また何かトラブルに巻き込まれたら――どうしても、そっちの方に考えが及んでしまうのだ。


「――いや、学園には行く。ただ、学園祭の期間中に、スラフィンさんが会ってくれるかどうかは分からないけど……」

「その心配はいらないわ。ママは研究職だから、学園行事にはほとんど参加しないの。たぶん、いつも通り、研究棟にいると思うわ」


 娘であるキアラからの情報なら間違いないな。


「よし。それなら学園へ行こう」

「よろしいんですの……?」


 心配そうに尋ねてきたのはシャーロットだった。


「研究棟のある辺りは、学園祭の影響がないだろ?」

「ま、まあ、あっちの職員は参加しないと思いますが……」

「なら問題ない。ウィリアムスさんが管理する学園農場側の入口から入ればいいわけだしね」

「っ! その手がありましたわね!」

「冴えてるじゃない、ベイル! それならいけるわ!」


 キアラとシャーロットも乗り気になったところで、俺たちは改めて学園へ向けて出発する。


 ――何事も起きなければいいが。

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