第192話 再び学園へ
久しぶりの学園訪問の前に、俺はタバーレスさんとグレゴリーさんに竜樹の剣が元通り――いや、それ以上の力を得たと報告する。
どちらの反応も「さらに強力になったのか……」と茫然とした感じだったが、野菜の育成ペースが戻ることを聞くとホッとしたようだった。
とはいえ、今回は新たな問題が発生している。
野菜の育成くらいならば問題なく力を使っていけるのだが、有事の際に戦闘へ転用できる力をコントロールするのに苦労していた。
霧の魔女との戦いは、相手も初見だったってこともあり、なんとか退けることができたのだが……もし、次に対峙するようなことがあったら、同じようにはいかないだろう。現に、ハノンの母親――ママラウネと戦った時はほとんどこちらの負けみたいなものだったからな。
それを克服するため、俺はキアラの母であり、原作【ファンタジー・ファーム・ストーリー】においても、困ったプレイヤーを助けてくれる、いわゆる「お助けキャラ」として有名なスラフィンさんのもとを訪ねることにしたのだった。
学園へ向かう当日。
俺たちが来訪することは、キアラが使い魔を通じてすでに報告済み――なのだが、どうにもその返事を受け取ってから、キアラとシャーロットの様子がおかしい。
「どうする……?」
「どうするもこうするも……」
時折、ふたりで何やら話し合っているようだが……何だか、詳細な内容を聞きだせない雰囲気だ。
しかし、さすがにこのままの状態を続けるわけにもいかない。
出発前――何か事情があるなら、それを聞いたうえで中止にすることも検討する。
そのことを告げた上で、ふたりに尋ねると、
「実は……近々、学園祭が行われるのよ」
まるで余命を宣告するような重苦しさで、キアラはそう告げた。
――けど、内容だけを聞くと、そこまで深刻になるような問題じゃないと思うのだが。
「学園祭ってなんですか?」
一方、そもそも学園祭の存在を知らなかったマルティナ、ハノン、シモーネ、アイリアの四人は全員揃って首を傾げた。
というわけで、簡単に説明していくと、
「なんだか楽しそうですね!」
「特別嫌になる要素はないと思うのじゃが……」
「わ、私もそう思いますぅ」
「ふたりは何をそんなに嫌がっているんだい?」
「「…………」」
アイリアの質問に対し、キアラとシャーロットは互いに顔を見合わせてから静かに頷いた。どうやら、すべてを話す覚悟を決めたらしい。
「竜樹の剣が復活した時、嬉しさのあまり学園へ来ることを了承しちゃったけど……」
「実は今、ベイルさんにとって一番会いたくない人物が非常に厄介な立場になっているのです」
「俺が一番会いたくない人物……」
シャーロットはオブラートに包んでくれたが……それって間違いなく従弟のディルクのことだよな。
あいつが学園で何かしでかしたのか?
「ディルクがどうかしたのか?」
「あの方は……わたくしやキアラさんを執拗に狙っているのです」
「えっ?」
どうやら、事態は思っていたよりもややこしいことになりそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます