第189話 真夜中の攻防?

 温泉による竜樹の剣の修復は長期戦の様相を呈してきた。

 食事を終えた俺たちは、交代で温泉を見張りながら監視を行う。これはモンスターや寝ている間に襲撃しようと企む悪質な輩に対抗するためのものでもあった。

 

 森の中ということで、月明かりも届きにくく、真っ暗になってしまうために焚火を続行していた。

 いつもなら、周りに結界魔法を展開しているだけでいいのだが、温泉に浸けている竜樹の剣の様子も見張らなくてはならないため、こうして夜通しのチェックが必要となってくるのだ。

 ちなみに、現在は俺とマルティナが見守っている。


「ふあぁ~……」

「そろそろ限界かな、マルティナ」

「っ!? い、いえ! そんなことはありません!」


 顔を振って眠くないアピールをしているマルティナ。

 だが、目はトロンとしてきて、目蓋の重みに耐えきれなくなってきている。夕食の準備もしていたし、疲れたのだろう。


「あともうちょっとで次のハノンとシャーロットに交代するから、先にテントへ行っていていいぞ?」

「し、しかし……」

「俺もすぐに戻るからさ」


 そう伝えると、マルティナも折れてくれた。

 あとは朝までゆっくり休んでもらおう。


 それからは俺がひとりで温泉と周りの監視を行っていく。

 フクロウの鳴き声が響く以外に物音ひとつなく、静まり返ったその空間はまるで現実世界から隔離されたようであった。


「ちょっと不気味さがあるな……」


 嫌な気配を振り払うように、ちょっと大きめの声でしゃべる。思えば、今の俺は手ぶらじゃないか……ちょっと迂闊だったかな?


 そんな心配をしていると、テントに動きが。


「お疲れ様です、ベイルさん」

「ここからはワシらが変わろう」


 次の見張り役であるシャーロットとハノンがやってきた。


「助かったよ。さすがにそろそろ眠くなってきていたんだ……」

「無理はしないでくださいよ」

「そうじゃぞ。――って、マルティナはどうしたのじゃ?」

「先に寝てもらったよ。まあ、俺もこれでゆっくりと――」


 テントに戻って寝ようと思ったその時、背後で強烈な閃光が。


「っ!? な、何だ!?」

「お、温泉が光っていますわ!?」

「どうやら……竜樹の剣に何かあったようじゃな」


 俺とシャーロットは突然のまばゆい輝きに動揺するも、ハノンは冷静に事態を分析していた。実際、その通りで、俺たちの目をくらませた光は温泉のある方向から放たれていたのだ。


 それは即ち――竜樹の剣に「何か」が起きた証だろう。


「ちょ、ちょっと、何なのよ、この光は!?」

「一体何が起きたんだ!?」


 この事態に、キアラやアイリアがテントから出てきた。それからしばらくして、シモーネとマルティナもやってくる。


 全員が揃ったところで、俺たちは静かに温泉へと近づいていく。

 温泉は今も薄っすらと発光しているようだが……一体、何が起きたっていうんだ?

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