第182話 持ち帰った情報

 シャーロット、シモーネ、アイリアの三人は、武器を直すことができる温泉について有力な情報を得たらしい。


「もったいぶらないで教えなさいよ」

「それでは発表いたしますわ!」


 力強く言い放ったシャーロット。

 その場所とは――


「ここから北にある渓谷にあるそうですわ!」


 とのことらしい。


「……本当でしょうね?」

「あら、疑っていますの?」

「あなたを疑うというより、情報源が確かなのか気になるのよ」


 キアラの指摘はもっともだ。

 何せ、武器を直せる温泉が湧く場所はランダムで、ほんの二、三日の間に枯れ果ててしまうという。それからさらに数日後に現れるという現象を繰り返す、まさに神出鬼没の温泉なのである。


 その出没情報は滅多に出回らないし、出たとしても情報料として多額の金を請求されるケースが多い。――って、まさか……


「もしかして……お金を渡したとか?」

「まさか! 無償提供ですわ!」


 ますます怪しいな。

 いや、嘘だとしてもどうしてそんな情報を与えたのだろう。……ただ三人をからかっただけだろうか。


「ちなみに……その情報をくれたっていうのはどんな人だった?」

「初老の紳士でしたわ!」

「うん。とても爽やかで好感の持てる人物だったよ」

「優しそうでしたよぉ」


 シャーロットだけでなく、アイリアやシモーネからも好感触を得ている情報提供者――とはいえ、それだけで情報を鵜呑みするわけにもいかない。


「……どうする?」


 最終的な判断は俺に委ねるといったリアクションのキアラ。マルティナやハノンも同意見のようだ。


 さて……どうしたものか。

 シャーロットたちはその情報が真実であると疑っていない様子。

 俺としては怪しさが先行しているが……かといって、じゃあ他にどこを調べようかっていう見当もついていない。これは揺るぎない事実だ。


 そうした状況から、


「よし。行ってみようか」


 とりあえず、シャーロットたちが掴んだ情報を信じてみることにした。


「さすがはベイルさんですわね」

「僕たちのことを信頼しているってわけか」

「きっとそこに温泉がありますよぉ」


 大喜びの三人。

 一方、キアラは「本気?」とでも言いたげな表情だったので、俺は先ほどの他に行くあてがないという説明をする。


「まあ……それもそうね」

「もしかしたら、本当にあるかもしれませんし」

「そのような重大情報をタダで寄越す酔狂な男が本当にいればの話じゃがな」

「まあまあ。とりあえず、行ってみればすべて分かるよ」


 このまま情報を求めてウロウロするより、まずは行動に出てみよう。

 今は藁にもすがりたい思いだ。

 たとえ怪しくても可能性がゼロでないなら挑んでみる価値はある。

 もしかしたら、道中で何か新しいヒントを得られるかもしれないし。


 とりあえず、今日のところは日暮れも近いということで断念し、明日改めてその温泉があるという「北にある渓谷」へ向けて出発することにした。

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