第181話 いざ、温泉探し

「見えてきたぞ――ヒデル温泉郷だ」


 思っていたよりもずっと距離が近かったヒデル温泉郷。

 だが、本題はここからだ。

 温泉郷という名が示す通り、この辺り一帯に湧き出る温泉を中心にひとつの町が形成されているのだが……正直、その規模が果たしてどれほどのものなのか、正確な大きさはグレゴリーさんから渡された資料にも記載されていなかった。


 これだけの広大な土地の中から、ランダムで出現する武器を直す湯を見つけなくてはならない。

 可能性としては限りなく低いのだろうが、この温泉地でその湯の詳しい場所を知っている人を捜す――とりあえず、俺たちは今日の宿を確保してから手分けして情報を集めることにした。


 ちなみに組分けは俺とマルティナ、キアラとハノン、シャーロットにシモーネにアイリアとなっている。


「それにしても、独特の匂いがしますね」

「温泉特有の香りだな」


 さすがは温泉郷と呼ばれるだけはある。

 宿屋やお土産屋が集中している中心地には、あちらこちらから湯気が立ち込めており、なんとも言えない匂いが漂っていた。


 ゲームでもそうだったが、ここは有名な観光地でもあるため、人の数は多い。それだけ情報が手に入る可能性も高いということだ。

俺とマルティナは、とりあえずいろんな人から話を聞いた――が、


「あぁ……噂は聞いたことあるけど、どこにあるかは知らないな」

「俺も探しているところなんだよ」

「逆にこっちが聞きたいくらいだぜ」


 返ってくるのはどれも手がかりとは呼べないものばかり。

 ただ、知名度は高く、また、俺たちと同じようにその場所を探し求めているという人が意外と大勢いた。

 残念ながら、現在の場所を知っているどころかこれまでに訪れたこともないという人ばかりなので、具体的なヒントらしいヒントは得られなかったものの、その可能性の片鱗は薄っすらと見えている気がする。


「この調子で聞いていけば、きっとそのうち知っている人に当たるはずだ」

「ですね!」


 確かな手応えを感じている俺とマルティナ――で、あったが、残念ながらそれは手応えにとどまり、確証を得られるには至らなかった。


 それでもあきらめきれずに探し回っていると、


「「「「あっ」」」」


 偶然、キアラとハノンのコンビと出会う。


「そっちの状況はどう?」

「ダメね。みんな武器を直せる温泉のことは知っているみたいだけど……」

「肝心の場所については知らないみたいじゃ」


 どうやら、ふたりも俺たちと同じ状況らしい。

 こうなってくると、シャーロットたちも情報を手に入れることはできていないだろうなぁ。


「あら? みなさんお揃いですの?」

 

 ちょうどその時、シャーロットたちとも出くわした。


「その様子ですと……何も見つからなかったようですわね」

「そういうあなたはどうなのよ」

「ふふん!」


 得意げにドヤ顔をかますシャーロット。

 シモーネとアイリアもどこか自信ありげって表情だけど……まさか、本当に具体的な情報を手に入れたのか?

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