第180話 ヒデル温泉郷
使用不可となった竜樹の剣を直すため、俺たちは早急にヒデル温泉郷へと旅立たなくてはならなかった。
とりあえず、タバーレスさんの次はグレゴリーさんだ。
「あの竜樹の剣が……」
ドリーセンの町にある商会へと立ち寄り、事の顛末を説明。
それから、修復のために数日の間はヒデル温泉郷へ向かうこと、野菜は今畑にある物を収穫し、ウッドマンたちに運ばせることを話した。
「野菜の件は了解した。まあ、多少納品が滞っても、メインの相手は学園やタバーレス家だから、事情を説明すれば分かってもらえるだろう。学園に関しては俺から連絡を入れておくよ。農園を管理しているウィリアムスはよく知っているんでね」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
竜樹の剣復活に向けて、グレゴリーさんも全面協力してくれることになった。
商会をあとにした俺たちは、一度ツリーハウスに戻り、今回の長旅に必要なアイテムを馬車へと積み込んでいく。
それが終わると、今回もお留守番役をお願いするクラウディアさんとウッドマンたちに「いってきます!」と挨拶を済ませ、馬車へと乗り込んだ。
ちなみに、今回も御者は俺が務める。
「砂漠から戻ってきたと思ったら、今度はすぐに温泉郷とはね……」
「それだけ聞くとバカンスにでも行くような感じですが、実際はこのダンジョン農場の明日を左右する大事な旅ですわね」
シャーロットの言うように、今回の旅で竜樹の剣が元通りにならなければ――そんな悪い予感を払うように首を横へ振る。
それに……ただ剣が直ればいいという問題ではない。
俺自身がレベルアップしなければならないのだ。
問題は俺の魔力量。
今後、再び樹神の剣を呼びださざるを得ないような状況になった時、魔力量の乏しい今のままでは竜樹の剣に多大な負担を強いることになる。そうなれば、今度はヒビが入るなんて程度じゃ済まされないかもしれない。
竜樹の剣の復活と、俺自身の強化。
今後のテーマはこのふたつだな。
さて、そのヒデル温泉郷への旅路だが、前回のレーム砂漠に比べたら日帰りで行ける距離だ。
――とはいうものの、問題点がある。
それは……この温泉郷がめちゃくちゃ広大だということだ。
「ふむぅ……これを読む限り、ヒデル温泉郷とやらはとても一日で見て回れる大きさではないようじゃな」
「わぁ……本当ですねぇ」
タバーレスさんからもらったヒデル温泉郷のパンフレットを眺めてそう言ったのはハノンとシモーネだった。
確かに、あそこは広い。
とても一日ではすべての温泉を回れないだろう。
……だが、問題はそこじゃないんだよなぁ。
「ヒデル温泉郷が大きいのはそうなんだけど……厄介なのは武器を修復できる温泉がどこに現れるのか分からないっていうことだ」
「? どういうこと?」
俺の言っていることが理解できていないアイリア――いや、まあ、言っている俺も半信半疑ではあるが、ゲームでの設定ではそうだったんだ。
広大なヒデル温泉郷の中のどこに現れるのか……まずはそれを突きとめなければならないだろう。
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