第178話 修復方法
使用不能となった竜樹の剣を復活させられるかもしれない方法。
正直言って、「絶対に直る」とは断言できない。
俺はそう前置きをしてから、みんなに説明した。
「温泉だ」
「「「「「「????」」」」」」
唐突な「温泉」というワードに、全員が一斉に首を傾げた。
「ちょ、ちょっと! こんな時にふざけている場合じゃないでしょ!」
抗議の声をあげたのはキアラであった。
……まあ、そう思われても仕方がない。
だが、俺は至って大真面目だった。
「キアラの気持ちは分かる。――だけど、この世界には武器を直す温泉が存在しているのも確かなんだ」
「ほ、本当なんですか!?」
マルティナが驚きに声をあげ、それに対して俺は静かに首を縦に振った。
武器を直すための温泉。
それは確かに存在する――が、それはあくまでも【ファンタジー・ファーム・ストーリー】の中でということになる。同じ温泉が存在しているかどうかはまだ分からないし、同じ効能があるかどうかも一切不明。だから、俺は「絶対に直る」とみんなに断言できなかったのだ。
ともかく、今は一大事だ。
俺たちはまずタバーレスさんへ事態を報告。それから、例の温泉について質問し、実在すれば大至急そこへ向かうことにした。
と、いうわけで、ダッテンの村の人々とは、かなり慌ただしい別れとなった。
畑をつくるための土壌整備は終わっているため、あとは彼らの頑張り次第で野菜は育つだろう。
ちなみに、ママラウネと赤い髪のアルラウネに関してはダンジョン農場でしばらく保護することにした。
赤い髪のアルラウネはともかく、ママラウネの方はすっかり大人しくなったので、クラウディアさんにお任せしても大丈夫だろう。いざとなれば強化したウッドマンたちもいるしね。
俺たちは竜樹の剣が直ったらまた必ず訪れると約束し、ダッテンの村を後にした。
◇◇◇
今回はママラウネたちも同行しているということで、野宿を挟んでの帰宅となった。
「おかえりなさいませ、みなさま」
「「「「「キキーッ!」」」」」
ダンジョン農場に到着すると、まずクラウディアさんが出迎えてくれた。さらにその後からたくさんのウッドマンもやってきた。
農場管理のメインは彼らに任せていたのだが、どうやらバッチリお世話をしてくれていたみたいだな。クラウディアさんの話では、グレゴリーさんの商会へもきちんと野菜を運んでいってくれたらしい。本当に頼りになるよ。
「おや? また女性が――しかもふたりも同時に」
連れてきたふたりのアルラウネを見たクラウディアさんの感想は予想通りのものであった。
「しかし、どちらもハノン様に似ていらっしゃいますね……」
「なんですか、その目は」
「……いえ、別に」
あらぬ疑いをかけられているようだから、とりあえず彼女たちのことを一から十までみっちり説明する。
それから、ふたりをツリーハウスへ移動させ、俺たちは竜樹の剣についてタバーレスさんに相談すべく、すぐさま屋敷へ向けて出発したのだった。
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