第175話 一件落着
アルラウネの全身を包む輝きは、やがて徐々にその勢いを弱めていく。
その結果――
「ま、魔力が……」
姿形に変化は見られないが、その魔力の質に関してはまるで別人ではないのかと疑いたくなるくらい変わっていた。それも悪い方向にではなく、よい方向に、だ。
「こ、これは……」
「どうしたっていうのよ……」
「不思議ですわ……」
俺とキアラとシャーロットの三人は、その変わりように驚きを隠せなかった。一方、魔法絡みの案件に疎いマルティナ、シモーネ、アイリアの三人は揃って首をカクンと傾げている。
「ちょ、ちょっと! 僕たちにも分かるように説明してくれよ!」
アイリアからの抗議を受けて、シャーロットが説明役を引き受ける。
「今のアルラウネさんの魔力は、さっきまでとはまるで違う――」
「ちょっと待って。アルラウネってどっちの? 赤い髪の子?」
「そっちじゃなくて――ママラウネさんの方ですわ!」
いや、ママラウネって。
確かにそれっぽい名前だけど。
「ママラウネ……」
ハノンはツボに入ったみたいでお腹抱えて座り込んじゃったよ。さっきまでの緊張感が台無しだった。
とはいえ、アイリアたちには分かりやすかったらしく、シャーロットが説明を終える頃には事態をしっかり把握できるようになっていた。
さて、そのママラウネさんだが――まず顔つきから違っていた。
ありきたりな表現になるが、憑き物が落ちたって感じがする。さっきまでは自分の娘であるハノンを取り込もうとしているだけあり、どこか邪悪な気配を漂わせていたが、今ではそんな物騒な雰囲気は微塵もない。
二十代後半くらいまで成長した、いわゆる落ち着いた大人の女性になったハノンがそこにいた。
「ママ!」
そこへ駆け寄ったのは、赤い髪のアルラウネ。
改めて思ったんだけど……あの子はハノンと姉妹ってことだよな。外見も髪が赤いってことを除けばほとんど一緒だし。双子になるのか?
そんな疑問を抱いている間に、ママラウネと赤い髪のアルラウネは涙を流しながら抱き合っていた。
「今まで苦労をかけてごめんなさいね。失っていた力が戻ったわ……」
「うん……うん……」
話の全容が見えてこないが……とりあえず、一件落着ってことでいいのかな。
――一件落着といえば、シモーネの無事も確認された。
例の花粉が与える体調不良は一時的なもので、時間が経過すれば改善される程度のものだったらしい。ただ、あの時のシモーネは本当に苦しそうに見えたからなぁ……かなり焦ったよ。
ともかく、詳細な事情はこれから明らかにしていくとして――まずは事件解決を喜び合うとしよう。
――が、俺たちの仕事はまだ終わりじゃない。
むしろここからがスタートだ。
砂漠の村に農場をつくること――これがうまくいって、ようやく俺たちに与えられた仕事が完了する。
とりあえず、俺たちは戻って村長のエドワーズさんに報告をしなくちゃな。
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