第160話 暑き旅路

 今後の方針が決まったところで、俺たちはレーム砂漠に向けて出発する準備を整えていく。

 ハノンの母親……一体、どんな人――じゃなくて、アルラウネなのだろうか。

そして、なぜ今さらになってハノンを連れ戻そうとしているのか。


 これらの謎を解明するためにも、俺たちはレーム砂漠を目指して進んで行く。



 町を出てから数時間後。


「暑くなってきたわね……」

「噂に聞いていましたし、覚悟もバッチリ決めていたはずが……さすがにこの暑さはキツいですわねぇ」


 額から汗を流すキアラとシャーロットから弱気な発言が。

 無理もないか……確かに、めちゃくちゃ暑いからな。

 ただ、ふたりよりヤバそうなのが――


「…………」


 もはやひと言も発せられなくなったシモーネだった。

 水竜の竜人族である彼女には、この熱気と乾燥は大敵――本人は大丈夫だと言っていたが、さすがにこれ以上は厳しいか?


 一旦引き返した方がいいのかと迷い始めたその時、遠くの方に薄っすらとだが木々と湖が見えた。


「っ! シモーネ! 湖よ!」

「ホントですか!?」


 キアラの声を聞いて飛び上がるシモーネ。

 瞳を輝かせながらウキウキしているが……その喜びは空回りに終わるかもしれない。


「もしかしたら……蜃気楼じゃないか?」

「僕もそう思うよ」


 俺の頭に浮かび上がる疑惑。

 それに、アイリアも追随した。


「しんきろう……?」


 対して、シモーネの表情から一気に感情が消え失せた。よほど水に飢えていたのだろうな。しかし、仮にそうだとしても、あのオアシス(と思われる場所)まではかなり距離がありそうだ。

 正規のルートを外れてあそこを追いかけていくと、後戻りができなくなってしまう可能性もある。あそこまでたどり着いて、蜃気楼でしたでは済まされないからな。


「シモーネちゃん、私の水を飲んでください」

「ワシのもやろう」

「マルティナさん……ハノンさん……」


 ふたりもこの暑さでだいぶまいっているみたいだ。

 ……そういう俺自身も、ちょっとクラクラしてきたんだよなぁ。


「目的地の村まではあとどれくらいでつくんだ……」


 まだ先は見えない。

 水のないところで水を生みだす……そんなの――


「あっ、できるかも」


 視線を下げて、竜樹の剣が目に入った時、俺の脳裏に【ファンタジー・ファーム・ストーリー】の攻略情報が脳裏をよぎった。


「できるって……何ができるって言うんですの?」


 そう尋ねてきたシャーロットへ、俺は笑みを浮かべながら答える。


「湖がないっていうなら、作ってしまえばいいんだよ」

「……暑さで思考力が限界突破したみたいですわね」

「違うよ! できるんだって! ――この竜樹の剣があれば!」

「ほ、本当なの!?」


 真っ先に食いついたのはキアラだった。

 それからシモーネ、アイリアへと衝撃が伝播していき、最終的に全員の意見が「湖で水浴びがしたい!」にまとまる。


 と、いうわけで、俺はちょうどいい感じのスペースを発見し、その近くへ馬車をとめた。

 善は急げ。

 早速、即席の湖づくりをはじめようか。





…………………………………………………………………………………………………


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 以上の要素がお好きな方はぜひ読んでみてください!

 そうでもないという人もこの機会にぜひ!

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