第159話 みんなで決めたこと

 翌朝。

 宿屋に併設する食堂で朝食をとりながら、俺は昨夜の出来事を話した。

 ハノン以外のアルラウネが現れて、しかもそいつがハノンを狙っている――この事実にメンバーは驚きを隠せない様子だった。

 中でも、

 

「つまり、ワシの妹ということじゃな……」


 複雑な表情を浮かべるハノン。

 恐らく、おぼろげながらも記憶があるのだろう。


「赤い髪のアルラウネ……ハノンの妹なのか?」

「直接言葉を交わした記憶はないが……なんとなくそんな気がするだけじゃ」


 顔も声も知らないが、妹だと判断できる―――本能に刻まれているってわけか。

 

「で、でも、それじゃあ依頼はどうする? このまま砂漠の町へ行けば、ハノンのお母さんが狙ってくるかもしれないんでしょ?」


 キアラの懸念はもっともだし、俺も同じことを思っていた。

 だが、


「ワシはむしろこのまま突っ込みたいのじゃがな」


 意外にも、ハノンは乗り気だった。


「い、いや、しかし……」

「心配するな。これもまた、ワシの本能が囁いているのじゃが――相手は手荒なマネなどしてこないじゃろう」


 ハノンはキッパリと言い切った。 

 これもまた根拠などないのだろうけど、本能で「そうだ」と言い切れるってわけか。


「ワシは……ずっと気になっておったのじゃ」

「気になっていた?」

「キアラやマルティナが、親と仲睦まじくしている様子を見ていると――ワシの親とは一体どのような存在なのかと思えてな」


 そう語るハノンの表情は、どこか寂しげだった。

 ……言われてみれば、親の存在がもっとも謎なのはハノンだ。シモーネの両親も見たことはないが、竜人族であるということはこの世界のどこかにはいるだろう。だが、アルラウネであるハノンは、スラフィンさんからもらった種子から誕生している。


 その種子も、スラフィンさんは名のある商人から購入したらしく、詳しい出所は分からないという。


 いつもサバサバしていて、あまり深く考えていなさそうなハノンだが、スラフィンさんとキアラ、そして、マルティナとヒューゴさんの様子を見て、ふと自分のことが気になったのだろう。


「……そうか」


 家族のことが気になる。

 それなら……仕方ないよな。


「行こう」

「い、いいの!?」


 シャーロットは俺の判断にビックリしたようだが、


「まあ、それがいいよね」

「私も協力します!」


 アイリアとシモーネはヤル気満々だ。

 同じく、マルティナとキアラも真っ向から挑むつもりでいる。


「はあ……相変わらず、向こう見ずというかなんというか」

「それがうちのいいところでもあるんじゃないか」

「誇れるところがどうかは疑問符がつきますわ」


 とか言いつつ、シャーロットの表情は穏やかなものだ。



 こうして、俺たちは一致団結してハノンの家族に会う覚悟を決めたのだった。







…………………………………………………………………………………………………


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